選手が困難を克服するために、指導者と親が考えたい心の現実

スポーツの世界に身を置いていると、誰もが直面する「うまくいかない時期」があります。思うように技術が向上しない、勝利が得られない…。そんな時があるかもしれません。そのようなとき、「わからない」「できない」と投げ出したりしていませんか。もしくは、あなたの生徒やお子様がそのような場合はありませんか?そう感じてしまう方が、どのような気持ち、どのような感情でそう思ってしまうのか、考えてみたいと思います。

周りの目を気にして自分を決定している。

ここからは
Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち
先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち
を参考にしながら、紐解いて行きたいと思います。

Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち
では、Z世代の様子を描きながら、Z世代のあり様は社会を凝縮しているのではないか、というかたちで解説をしています。
そして、Z世代の一つの特徴として、他者の目を気にして行動することを指摘しています。

それにしても、若者とコミュニケーションしていてつくづく思うことがある。若者はあまりにも友達に囚われている。何をするにもまず、友達の顔を見る。SNSも、多くは友達とつながるために用いられている。

Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち

自分だったらどうかという答えを後ろに引っ込めるか、自分の考えと分けて答える傾向がある。

Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち

このような姿から一つ考えられることは、うまく行かないとき、諦めてしまうときに、その諦めてしまう「自分」が他者との関わりの中で生まれてきているのではないか、ということが考えられます。
つまり、周囲の人が自分の姿を見た時の姿を想像して、周りから浮かないような姿勢でいること、自分がどうしたいか、というよりも、周りからどう思われるか、ということによって、「諦める」「わからない」という結論に導かれている、のではないでしょうか。

コスパ

そして、もう一つの視点は「コスパ」です。

どこまでも上をめざすという最大化ではなくて、ほどよく得できる、コスパの良い、「最適」をめざすのである。言い換えれば、平均ちょっと上。周りをつぶさに見て、平均を推定して、そのちょっと上になる、ってことを慎重にめざす。これが若者の特徴のように見受けられる。

Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち

周りが見えなくなるくらい熱中する前に自分をきちんと冷まして、客観視して、コスパがそれほど良くはない、宗教のようである、としてブレーキをかける傾向がある。

Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち

若者に限らず、今の社会を覆う傾向として、いかにコスパを良くするか、時間やお金をかけずにパフォーマンスをあげるか、「卒なくやるか」が重視されている風潮があるかと思います。このような風潮・価値観の中で、がんばったり、わからないのにもがいたり、あがいたり、試行錯誤している姿、というのは、「ダサい」姿であり、かつ、それは周囲から浮くことになる、と感じるかもしれません。

妄想をして怖がる

ただ、一方で、もし他の人がそのように努力している姿を見たとしても、自分自身は他の人をそのように「ダサい」とも思うか、と問われると、そんなことはない、と思っています。
しかし、いざ自分が主体となると、他の人からそう見られているのではないか、と妄想をしてしまうのです。

つまり、自分は決して抱かないような感情や考えを、君は他人の中に勝手に妄想し、それを怖がっているだけなのだ。
先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち

実際に、自分が試行錯誤したり、あがいたり、もがいたりすることで、「浮いてしまうのでは」「ダサいのでは」という妄想がゆえに、「わからない」「できない」と結論付けているのではないでしょうか。

では、このような考えに至ってしまう時、本人は、そして周囲は、何ができるのでしょうか。

自分と向き合う時間の重要性

このように考えていくと、「まわりに流されず、自分を貫こう」という結論が導けますが、そう考えて簡単にできるものではありませんし、到底いきなりそんな勇気ある行動はできません。
言葉で書くことは簡単ですが、実際に自分の行動を変えるということは生き方を変えることでもあります。

まずは、自分がどう行動しているのか、どういう決断をしているのかを見つめてみることからかと思います。自分を振り返り、自分の決断と向き合うことから始めましょう。周りと比較したり、周りの意見を気にしていると、どこまでが自分の意見で、どこまでが他人に影響されているものか、わからなくなっていると思います。「自分」がわからないのです。

であるならば、まずは「自分」がどういう存在なのか、何が良くて何が嫌なのか、どうしたいのか、少しずつ明らかにしていきましょう。
逆に言うならば、そうしなければ、いつの間にか挑戦できる期間が過ぎ去っていき、結果が出ない自分を目の当たりにして、「まぁよくがんばったよね」と自分を慰めることになるでしょう。

周りができること

一方、周囲にいる人間はどう関わることがよいのでしょうか。

若者が、まわりの目を気にしたり、コスパを重視する背景には、社会や企業、大人たちの余裕の無さがあると指摘しています。

「余裕」だ。とにかく余裕がない。
Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち

私達は色々な情報にさらされています。
「〇〇をしなければこうなる」「◯◯をするとこうなれる」「周りの人は〇〇していますよ」「少しでも損をしない方法は〇〇です」
こういった言葉を目にすることもあるでしょうし、逆にあなたがこのような働きかけをするケースもあるかもしれません。

もしも、このように働きかけられると、受け取る側は、その言葉の前提にある「不安」や「比較」も含めて受け取っていくと考えられます。
例えば部下に、例えば子どもに、例えば生徒にコミュニケーションをする時、このようなコミュニケーションになっていないか、振り返ってみてもよいのかもしれません。

そして、このように働きかけるということは、働きかける自分自身の中にそのような「不安」や「比較」「余裕の無さ」が存在し、それを動機として行動したり、働きかけている、と考えることができます。

そのように考えていくと、まず自分が、どういう姿勢で、どういう心で、接していたり、働きかけているのか、
同時に筆者自身も、どういう姿勢でどういう心で接しているか、振り返ってみたいと思います。

まとめ

スポーツにおいて困難な時期に、多くの人が「できない」と諦める背景には、周囲の目を気にしたり、コスパを考える思考が影響しています。そこには、選手自身とともに、社会全体も含めた風潮が影響しているのではないでしょうか。選手自身が自分の決断を考えることと同時に、周囲の関わる人達もどのような関わり方をしているか、振り返ってみることで、変化が生まれるかもしれません。

参考文献:
Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち 舟津 昌平 (著)
先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち 金間 大介 (著)

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