モチベーションを維持できない本当の理由、行動だけでは続かないあなたへ

モチベーションが維持できないというお悩みをお持ちの方も多いと思います。モチベーションを維持するために、よく言われるのが「小さな行動から始めよう」「まずは動いてみよう」といったことが言われますが、そのように取り組んでも、思うように続かないという方も多いのではないでしょうか。それは決して甘えではなく、表面的な行動だけでは満たされない「内側の声」に理由があるのかもしれません。本記事では、行動と心の両面からモチベーションの維持について考えてみたいと思います。

“小さく・すぐに・確実に”できる行動から始める

やる気が出ない——その状態は決して特別ではありません。大切なのは、「やる気が出るまで待つ」「やる気を起こす」のではなく、「やる気が出なくても始められること」を選ぶことです。たとえば、練習着に着替えるだけ、靴ひもを結ぶだけ、ノートを1ページ開くだけ。それでも立派な行動のスタートです。

モチベーションは、行動のあとからついてくる——これは心理学や行動科学でも多く論じられてきたテーマです。「やる気があるから動くのか、動くからやる気が出るのか」という問いに対して、多くの研究は「動くことが先」という傾向を示しています。つまり、モチベーションは行動によって引き出され、後から高まることが多いのです。

だからこそ、最初の一歩は小さく、すぐに、確実に行えるもので達成感を感じることができるものが良いでしょう。たとえば練習なら、いきなり難しいメニューに取り組むのではなく、「できた」と思えるメニューにまずは取り組み、自己効力感(達成するための能力を自分が持っている感覚)を感じることで、モチベーションの維持へとつながります。

逆に、気分が整うのを待ってしまうと、頭の中は同じ考えを繰り返し、着手は遅れ、「後回しにしている自分」にも嫌気がさす——その結果、モチベーションの維持が難しくなる気分待ちのループに入ってしまうのです。

とはいえ、小さな行動を始めるだけではなかなかモチベーションの維持ができない方も多くいらっしゃるかもしれません。たとえば、

  • チェックリストややるべき小さい行動は埋まるのに、それが負担になる
  • 目標が遠すぎて、中間の意味や手応えが感じられずに挫折する
  • 他人や数字に合わせるあまり、自己基準が薄まり気持ちが不安定になる
  • “やるべき”が多くなり、事務的に取り組んでいる

こうした背景には、行動に“意味の文脈”が通っていないことが原因です。そこで次章では、こうした行動にどのように意味を込めていくのか、考えたいと思います。


行動の“点”に線を通す

小さな行動は有効ですが、小さい行動だけだけでは、モチベーション維持が難しくなってくる場面があります。

  • 行動することが目的になってしまう:チェックを埋めることはできても、なぜ続けたいのかがぼやけて、満足感が残りにくくなります。
  • 手応えが見えにくい:この行動が何に効いているのかが分かりづらく、前に進んでいる実感を持ちにくくなります。
  • 「やらなきゃ」に寄りがち:他人の基準や「べき」に引っぱられて、自分で選んでいる感覚が薄れ、疲れやすくなります。
  • 焦点がぼやける:注意が分散し、学びが積み上がっていく感覚が弱まりやすくなります。
  • 期待と感じ方のズレ:思ったほどの効果を感じられず、「自分には向いていないのかも」と感じやすくなります。

なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

小さな成果を見立て、そこに向かって微調整する

「小さく行動する」と言われると、多くの人は「とにかく何かやってみる」「やる気がなくても手をつける」という形で取り組みます。これは最初の一歩としてはとても大切なことです。しかし、行動だけを積み重ねても、なかなか続かないことがあります。なぜでしょうか?

それは、小さな行動だけだと「ただやるだけ」になりやすいからです。 行動の意味や手応えを感じられないままでは、やがて義務感に変わっていきます。そして、ある時ふと、「何のためにやっているんだろう」「これでいいのかな」と、モチベーションが切れてしまうのです。

そこで重要になるのが、「小さな成果」の見立てです。

小さな行動の先に、どんな小さな成果が得られそうかを具体的に設定するのです。 たとえば、

  • サッカー:取り組んでいる「ボールを受ける前に周囲を見る」という小さな行動に対して、「パスを受けた瞬間に相手の位置を把握できているか」という小さな成果を設定
  • 野球:取り組んでいる「打席前に相手投手の傾向をメモする」という小さな行動に対して、「狙っていた球種が来たときに迷わず振れているか」という小さな成果を設定
  • テニス:取り組んでいる「相手が打つときにはすぐに動き出す構えを整える」という小さな行動に対して、「次の球への反応が速くなっているか」という成果を設定
  • バスケットボール:取り組んでいる「ディフェンスのときに腰を落とす姿勢を意識する」という小さな行動に対して、「相手のフェイントに対応できているか」という成果を設定
  • 陸上競技:取り組んでいる「スタート前の呼吸を整える」という小さな行動に対して、「スタートで焦らず自分のリズムで切れているか」といった成果を設定

このように、小さな成果は「変化に気づく視点」であり、「達成感や意味を感じるための目印」になります。


小さな結果を積み重ねる練習の設計についてはこちらも参考にしてください。
👉️上達の近道は遠回りに見える——小さな結果を積む理由


小さな成果が出ていないときの調整法

小さな行動を積み重ねていても、思ったように小さな成果が感じられないときがあります。そんなときは、以下のような視点で小さな行動を見直してみましょう。

  • 行動があいまい:行動があいまいだと具体的な変化が生まれにくいときがあります。
    例)「丁寧にやる」では何をどう丁寧にするのかがあいまいなので、何をどう行動するのかを明確にする。
  • 成果と行動の関係を見直す:行動が本当に成果につながっているかを振り返り、必要に応じて行動を見直します。
    例)「ミスを減らす」成果を出すために「ボールを見る」行動を取ったが、ミスが減っている様子がない。ミスが出るときは間合いをうまく取れていなかったので、距離感を正確に取るように行動を修正する。
  • 成功条件が高すぎる:行動の成果がすぐに最終的な成果につながるとは限りません。そうしたときは、まずは“行動の成果”を設定して、小さな達成感や変化を得ることで、次につながる手応えを積み重ねていくことが大切です。ハードルを下げて、「できた」感覚を味わえるように調整しましょう。
    例)ミスを減らすために、「間合いを取る」ことを成果として設定するが、うまく間合いが取れなかったので、「間合いを取る」ために動き出しが素早くなるように準備を行うよう行動と成果を再設定する。

つまり、「何をしたか」だけではなく「それをすることによって何がどう変わったか?」を見直しながら取り組み、成果が出ないと感じたときこそ、行動の内容を調整し、自分の中での「意味づけ」を再設計を試みましょう。


成果が出ないときに原因と結果の関係を考えるための方法についてはこちらも参考にしてください
👉️なぜ努力が報われないのか?──原因と結果をつなげて考える視点


“どんな自分でも”を認める視点

このように、小さな行動と小さな成果で取り組み、最初は行動できていても、なかなか成果に結びつかずに、モチベーションが維持できなくなったりするときがあります。

小さな成果に結びつかないとき、その原因には、行動している自分で満足してしまい、その行動が本当に目的に近づいているかどうかを振り返れていない場合や、また、外からの評価や義務感で動いており、自分の内側から生まれた本当に達成したい成果に向けて動けていない場合も考えられます。

そのような時には、モチベーションの維持ができていない自分をそのまま観察するようにしてみましょう。多くの人が、「やる気がある自分」は良い、「やる気がない自分」はダメ、と、無意識に評価してしまいます。ですが、その前提があると、自分のことを「やる気があるべき」という色眼鏡で見てしまい、「やる気がない自分」のことを否定し、見つめることができないので、「やる気がない」本当の原因を見つけることができなくなってしまいます。

「やる気が出ない」「続かない」状態は、自分の中にある違和感や葛藤、優先順位の変化、またはエネルギー切れなど、何かしらのサインかもしれません。無理に行動でコントロールしようとするのではなく、「どうしてやる気が出ないのか?」「何が自分を止めているのか?」という問いを持つことで、表面的な感情の奥にある本当の声が見えてくることがあります。

たとえば、「本当はそのやり方に納得していない」「目標が他人の期待で設定されている」「やり方がわからなくて不安を感じている」といったように、やる気の低下には理由があります。その理由を拾い上げることができれば、「ただ頑張れない自分」と切り捨てるのではなく、「だからモチベーションが保てなかったんだ」と納得できる視点に変わっていきます。


「自分を振り返る」について、「自信」という観点で掘り下げた記事も参考にしてください
👉️自信がない子どもを変えようとする前に考えたいこと


「本当はどうしたいのか」

「やる気が出ない」「続かない」と感じているとき、その奥には「本当はこうありたい」「本当はこうしたかった」という願いが眠っていることがあります。

行動や目標が“ねばならない”で固められていると、いつのまにか本心が遠ざかり、やる気も湧きにくくなります。たとえば「もっと頑張らないと」「結果を出さないと」といった義務感や外的プレッシャーばかりが強くなると、本当の自分の声がかき消されてしまいます。

一方、「こうしたい」「こうありたい」という思いに立ち戻れたとき、人は驚くほど自然に動き出せることがあります。

  • 自分は何のためにこの競技をしているのか?
  • どんなプレーができたときに心から嬉しかったか?
  • 誰に、何を届けたくて努力しているのか?
  • 自分はどうありたいのか?

こうした問いを通じて、自分の願いが再確認できると、自分の「源」へと、モチベーションの根が近づいていきます。そして、その「源」に触れられたとき、人は無理に頑張らなくても、少しずつ行動を重ねていけるようになります。やる気が出ない状態をただ責めるのではなく、そこにある違和感や停滞感をきっかけに、自分の本音と丁寧に向き合ってみることが、結果的に自分に合ったペースややり方を見つけることにもつながります。

「本当の自分の声を見つける」ことは、表面的なモチベーションを補うテクニックではなく、より深く自分を理解するための過程です。そこにある思いや願いを見つめ直すことによって、モチベーションは一時的な波ではなく、長く続く土台へと変わっていきます。


モチベーションを“管理する”のではなく“寄り添う”

このように考えると、モチベーションは、無理やり管理するものではありません。むしろ、その変化や波に対して「どう付き合うか」「どう乗りこなすか」という姿勢のほうが重要なのかもしれません。波があることを前提にしながら、「調子がいいときはそれに乗り、調子が悪いときは悪いなりに乗れるようにする」といったスタンスです。

このように、モチベーションの波を否定せず、一定の距離感で付き合うことで、長期的にみた“維持”が可能になります。そして、むしろこうした波と楽しみnながら付き合えるようになったとき、どんな波も乗りこなせるあなたがそこにいるのかもしれません。


まとめ

本記事では、モチベーションを維持するための根本的な設計について解説しました。ただ行動リストを増やすのではなく、行動に意味を持たせ、少しずつ成果を感じ、自分の状態を受け止めながら、本心から湧き上がる目的意識に向かって進む。そのような流れを繰り返すことで、無理なく継続できる状態が育ちます。

自分を振り返ってみて、いまのあなたが一歩を踏み出せそうなところから、ぜひ試してみてください。今日選ぶその小さな一歩が、明日のモチベーションの土台になります。

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