サーブをさらにレベルアップさせようとした時に必要な『プロネーション』。実はただ『回内動作』をすれば良いわけではありません。プロネーションの動きは、正しい力の使い方によって回内動作を生み出すことではじめて鋭いサーブを打つことが可能になります。ここでは、正しいプロネーションとはどのようなものか、そしてどうすれば正しい力の使い方で楽に強いサーブを打てるようになるのか、そのポイントを解説します。
良いサーブにはプロネーションが必要になる理由とは?
プロネーションはどう行われる?
皆さんは、プロネーションという単語をご存知でしょうか。プロネーションとは、サーブでスイングをする時に手首で回内動作を行いラケットヘッドが回っていく動きを指します。
よく目にする説明では『親指側から押し出すように回内動作をしましょう』というように、動きの形やフォームを伝えているケースを目にします。
しかし、これではプロネーションの動きの本質を捉えていません。
ここで大切になってくるのは、『フォームではなくどのような力の使い方をするか』がとても大事なポイントです。
この力の使い方が間違ってしまうと、せっかくたくさん練習しても良いサーブにならないので注意して練習しましょう。
ムチのような動きをイメージする
ここで、サーブで力を発揮するための『身体や腕の使い方』『使われ方』について解説していきたいと思います。
サーブをスイングし、力を発揮していくときには、体の軸を回す力と回る力によって生まれるラケットの遠心力を活かすことによってスイングを行います。
そのため、腕とラケットをムチのように使い、滑らかな動きを実践することがポイントになります。
そして、特にプロネーションではインパクト近辺での動きがポイントになってきます。腕をムチのようにイメージした時に、身体が回ることによって(腕)がムチのように振り回されてきます。しかしそのまま大きくブルンと回ってしまうと、せっかく力が生まれてきたにも関わらず力が分散してしまいます。
回ってきたムチの動きを止め先端だけが走るようにすると、ムチの先端がシャープに走る動きが生まれて強い力が発揮されます。
この動きがプロネーションの正しい動きの質となります。
まずは正しくプロネーションの動きを理解しましょう。
正しいプロネーションを行うためのポイント
手首の力でプロネーションをするのではない
腕をムチのようにイメージしてムチの先端を走らせようとするときには、ムチの先端を持って操作してしまっては『走る』ような動きは生み出せません。むしろムチの動きを邪魔してしまい、振りが弱くなってしまいます。
プロネーションの動きを作る時に、回内動作を生もうとして手首の力で行ってしまう方がいます。しかし、せっかく腕をムチのようにして振り抜こうとしても、手首の力で操作しようとしたりコントロールしようとすると、振り抜く力が弱くなって手首だけの力で打つことになってしまいます。
その結果フォームはプロネーションができていても、動きの質がまったく異なりボールに威力の伝わらないサーブになってしまいます。
グリップは握るのか?
また、インパクトのときにグリップは果たして握るのか、という問題があります。
これは競技は違いますが、ゴルフを対象にしたスイング動作とグリップ力の分析をした研究結果があります。
その結果によると、
上級者はインパクト時にグリップ力が抜け、スピードが上がり滑らかな運動が可能になっているが、初級者はインパクト時にグリップに力が入り,スピードを落とすとともに安定性も悪くしていると考えられる。
とされています。
グリップの力を抜くことで、道具(テニスであればラケット)のスピードが上がり、滑らかに動きを作ることができる、ということになります。
手首の力を抜いて、腕を止める感覚でラケットを走らせる
このプロネーションの動きは、腕全体がムチのように走り手首の力が抜けた状態で腕の動きを止めることによりラケットヘッドが走っていく、という動きになります。
そのため、手首の力で走らせようとした動きではありません。言葉で表現するならば、『手首の使い方』ではなく、『手首の使われ方』がポイントになります。
そのため、手首の動きやラケットのフォームは正しい力の感覚で動きができているかどうかの確認手段として捉えるようにしてみましょう。
もし、この力の使い方の感覚がわからない方は次の例を参考にしてみて下さい。
手を洗ったあとに、あなたの手に水滴がついています。この水滴を払おうとした時に、手首の力で手先を振るのではなく腕全体を振り手首から先がだらんと走るようにして手を振ると思います。
この感覚が、手首の力を抜いた状態で走らせる感覚です。
このような感覚で腕を振ってみるようにしましょう!
インパクトで手首の力によってスイングが止まらないように
特に正しいプロネーションの動きを体得する時に多くの方が行き詰まるポイントがあります。
それは、素振りではこの感覚がつかめてきても、いざボールを打とうとすると同じ感覚で打てなくなってしまうケースです。
そのような時は、ボールを打つ時に『ボールを打とう』という意識が強くなり、グリップを強く握りすぎています。
振り抜こうとした時にグリップを強く握りすぎてしまうと、せっかく振り抜かれていこうとしたラケットの力が手首の力によっておさえられてしまいます。
その結果、ラケットの動きにブレーキがかかりボールに力が伝わらなくなってしまいます。
このような方は、インパクトのときもグリップを緩く持ったままトライしてみるようにしましょう!
もし『ラケットが飛んでいってしまうのでは?』(実際はそんなことはないのですが)と思われる方は、最初は軽く打って素振りと同じ感覚でスイングしながらボールが打てるかを試してみましょう。
まとめ
プロネーションの正しい動きと、手首の使い方や力の感覚についてお伝えさせていただきました。
特にお伝えしたいのは、プロネーションの動きというのはあくまで正しい力の使い方をされた結果であり『どこの力がどう働いてその動きが生み出されているか』ということがポイントになってきます。
フォームや動きだけでなく、その動きの質に意識を向けて、取り組んでみましょう。
参考文献:
ゴルフスイングにおけるグリップカとスキル 西沢 真一, 穂苅 真樹, 片岡 祐介, 渡辺 嘉二郎 スポーツ産業学研究 1998年 8 巻 1 号 39-47