安定したプレーを行うためには、できるだけ同じ打点でボールを打つことが大切になります。そして、そのために大切なのがスプリットステップです。スプリットステップをできるだけ正確に、適切に行うことで、その後の動きがスムーズになり、足がそれほど速い選手でなくても、ボールへの対応力が格段にあがってきます。今回は、スプリットステップに取り組んでいる方へ、さらにスプリットステップのどのポイントを集中的に掘り下げて取り組むべきか、何が課題となっているのかを整理いただくための解説をします。
足が遅くてもボールに追いつける
よくテニスの世界では、「足を動かす」というアドバイスが行われます。ですが、少し冷静に分析してみたいと思いますが、テニスコートの大きさを考えると、直線距離でダッシュしている時間はそれほど長いものではありません。
飛んでくるボールを追う動きを時間で整理し、その時間に取り組むべきことを整理してみると、
①相手が打つ瞬間:相手が打ったボールに動き出せるような構え・姿勢・心構え
②相手が打った直後:ボールの勢い等の質を見抜き、すぐに打球方向に動き出す
③打たれたボールがネットを超える頃くらいまで:ボールの軌道を予測し、打点へ移動する
④ボールがバウンドするまで:バウンド時に軸足のセットと構えが完了しているようにする
⑤バウンドしてから、自分が打つまで:予測と外れた場合への対応
に分けることが出来ます。
このように考えると、移動している時間は主に③の時間帯になります。
おおよそ相手が打ってから、ボールが飛んできて自分が打つまで、数秒という時間の中で、この①〜⑤が行われます。
ここからは考え方ですが、足を速くすると③が改善されるわけですが、一方で、①や②が遅いと、③の持ち時間が少なくなり、どんなに足が速くても対応が難しくなります。逆に言うと、①や②が十分に素早くできると、③の持ち時間が長くなり、足が遅くてもコートカバーは良くなるわけです。
ここで①と②の決め手となるのが、スプリットステップです。続けて、スプリットステップで取り組むべき要素について整理します。
スプリットステップの要素
スプリットステップでおさえるべき要素を整理していきたいと思います。
タイミング
まずひとつ目は、スプリットステップのタイミングです。先程も記載しましたが、相手がボールを打ってからこちらに飛んでくるまで長くても数秒しかないため、移動時間にできるだけ多くの時間をさけるようにするために、相手が打ったらすぐに移動を開始できるようにする必要があります。そのため、スプリットステップのタイミングをコンマ秒単位で、相手の打つタイミングと合わせるような意識で取り組みましょう。
合わせるべきタイミングは、相手が打った時に着地をするようにスプリットステップのタイミングを合わせましょう。もし、タイミングが掴みづらい方は、最初は早すぎるくらいのタイミングで構わないと思います。相手が振り始めたら飛び始める、というタイミングで試し、少しずつ色々なタイミングで試してみることで、スプリットステップのタイミングのコツが掴めてくるでしょう。
ご自身で実験をして試しながら取り組んでみてください。
バランス・歩幅・重心
スプリットステップをするときに、ただ単に飛ぶだけですとすぐに動き出す姿勢ができていません。その時のポイントは、バランス・歩幅・重心になります。
では、どのようなバランス・歩幅・重心が良いのか、と問われると思いますが、何のためにこのスプリットステップを行うのか、という視点から考えてみましょう。
スプリットステップは、実施した後にすぐに全力で走り出すために行います。例えば棒立ちで立っていたら、全力で動き出すことはできないでしょう。またバランスがどちらかに寄っていたりしたら、逆をつかれてしまったら対応ができません。
『着地後に、すぐに、全力で、前後左右どの方向でも、ダッシュすることができる姿勢を取る』という目的から、自分の姿勢を探してみましょう。
例えば、止まった状態から、ヨーイドンで、全力で前後左右どこでも動ける体勢を取り、その状態を覚えておいて、スプリットステップに取り組んでも良いと思います。
見る意識
そして、タイミングや姿勢ができてきたら、今度は意識を相手に向けてみましょう。繰り返しになりますが、スプリットステップは、すぐに相手のボールに対して対応するためのものです。ですので、相手がボールを打った後に、すぐにボールの軌道を見抜いて自分の打点を見極められれば、それだけ移動する時間にさくことができます。
そのためのポイントは、ボールを集中して見る意識を常に維持した状態でスプリットステップを行うことです。
私達は、『ボールを見る』といっても、様々な意識でボールを見ています。
たとえばぼーっとボールを見ているときもありますし、勢いを見抜こうとしてボールを見ているときもあり、視線はボールに向けられていたとしても、その見方は様々です。
その意識を、「ボールの勢いを見抜こう」という意識でボールを見ることで、相手が打ったあとすぐに軌道を見抜いて移動を開始し、動く時間にあてることができます。
事前準備を整える
スプリットステップでおさえるべき要素について解説してきましたが、これらの要素がうまくできないケースとして、「相手が打ったときにスプリットステップの意識をしようとしている」場合があります。
ですが、新しい動き方や意識で取り組むためには、その動きを注意深く、意識すべきことを明確にしながら動きに取り組む必要があるので、動きに取り組む前の時間で準備をする必要があります。
スプリットステップがなかなか改善しない場合には、多くのケースで、「自分が打ったボールを気にして」おり、スプリットステップで意識すべきことが抜け落ちた状態で、スプリットステップをしなければいけない時間帯に突入している場合があります。
もしも、なかなか改善しない場合には、スプリットステップの前の時間帯できちんと意識すべきことを思い浮かべて練習に取り組めているか、振り返ってみてください。その場合は、その練習における目標やテーマを明確に設定し、他のこと(例えば、ボールが成功した失敗した、うまく打てた打てなかった)は、除外して取り組むようにしましょう。(練習への取り組み方はこちらも参考にしてください)
スプリットステップを改善するとフットワークは驚くほどよくなります
ここまで、フットワークに悩む方のためのスプリットステップのコツや練習方法を解説してきました。
スプリットステップは、ボールを打ち損じた場合とは異なり、タイミングやボールを見る意識が適切でなかったとしても、やり過ごしてしまいがちです。
しかし、ミスや失点は、たくさんの原因により引き起こされていることを理解しましょう。確かにミスをしたショットにも課題があるかもしれませんが、実はもっと手前に改善するべき原因があるかもしれません。
もしも、なかなか改善しない場合には、練習で、自分がどのように取り組んでいたか、振り返ってみて、改善していきましょう。
フットワークに関しては、こちらの記事も参考にしてください。