
1. 成果が出ないと「やる気」や「努力」のせいにしてしまうとき
「最近、やる気が出ない」「もっと努力しないとダメなんだ」
こうした言葉は、練習や試合がうまくいかないときによく口にされます。ですが本当に、“やる気の不足”や“努力不足”だけが原因でしょうか?
実際には、努力しているのに成果が出ないというケースも多くあります。
そのときに必要なのは、“気持ちのせい”にするのではなく、構造的に問い直す視点です。
2. パフォーマンスが発揮できない本当の理由
「気持ちのせいにする」とは、問題の原因を“自分のやる気”や“メンタルの弱さ”に求めてしまうということです。
一見、自分の内面に目を向けているようでありながら、実はそれ以上の原因分析や工夫を止めてしまうリスクがあります。
- 「やる気が足りない」と思えば、頑張るしかなくなる
- 「気持ちが弱い」と思えば、自分に自信が持てなくなる
その結果、具体的に何をどう変えればよいかが見えなくなり、パフォーマンスは改善しません。
実際には、成果が出ていない、強くなれないと感じるとき、その直接的な原因は「やる気」や「努力の量」ではなく、動きがまだ巧みにできていないことや認知のスピードや精度が不十分であることです。
つまり、問題の本質は「やる気が足りない」のではなく、「必要な動き方や認知の仕方がまだ身についていない」ことにあります。
それを改善するために必要なのは、単純にたくさん練習することではありません。まずは、
- 具体的にどんな動きや判断がズレているのか、
- どのような状況でそれが起こるのか、
- どうすればそのズレを小さくできるのか、
といった問い直しを通じて、必要な課題を明確にし、小さな変化を積み重ねていくことです。
たとえば──
- ミスが多い(→ 動きのズレ)
- 反応が遅い(→ 認知の遅延)
- 自分の選択に迷いが生まれる(→ 判断基準が曖昧)
これらはすべて、“やる気”とは別の次元で起こっている現象です。努力や根性だけでは解決できないズレがあるからこそ、そこに焦点を当てる必要があります。
3. 動きと認知のズレに対して「問い直す」
では、どうすれば動きや認知の課題を見つけられるのでしょうか?
まずは次のような問い直しをしてみてください。
状態 | 問い直し |
---|---|
ミスが多い | 「ミスしているときとしていないときで何が違うのか?」 |
反応が遅い | 「何をどのように見ていたか?」 |
自信がない | 「成功体験を積めていない原因は何か?」 |
このように、“感情”や“意欲”ではなく、構造的な要素を観察する問いを立てることで、原因が明確になっていきます。
4. 成功体験を積み重ねるための練習設計
課題が見えたら、次に必要なのは練習の設計です。
ポイントは、成功体験を積めるようなスモールステップに分けること。
- 「できた」と実感できる要素は何か?
- どんな状況なら“試せた”と言えるか?
- どこまで再現できたら“成長した”と言えるか?
このような視点で練習を組むことで、自然と前向きな気持ちが生まれ、やる気に頼らず取り組めるようになります。
5. まとめ:「気持ちのせい」ではなく、「構造を問い直す」視点へ
パフォーマンスが発揮できなかったとき、つい「気持ちの問題」「やる気の問題」にしてしまいがちです。
でも本当に見るべきなのは、動き方・認知・判断・準備といった構造的な側面です。
そこに目を向け、ズレを問い直し、体験を積み重ねる練習を組む。
この積み重ねこそが、気持ちやメンタルに左右されずに成長していくための道筋です。
気持ちを責めず、構造を観察する。
この視点を、次の取り組みからぜひ持ってみてください。