スポーツの世界では、パフォーマンスを向上させるために数多くの情報やアドバイスが飛び交っています。しかし、多すぎる情報を取り入れることが、実はアスリートの成長を妨げているとしたら、どう思いますか?今回は、情報が過剰になることがどのようにあなたのパフォーマンスに影響を与えるのか、そしてその対策について考えてみましょう。
情報がもたらす過剰修正
上達するにはアドバイスや様々な知見が欠かせませんが、実は情報が多すぎることが、アスリートの動作に過剰な修正を引き起こす可能性があることはご存知でしょうか?1特に、動作についての細かな指摘やアドバイスがなされることで、アスリートは一つの動作に対して様々な修正を試み、逆にその動作が不自然になってしまうことがあると指摘されています。そしてその動作がクセになってしまうと、それを修正するために、多大なる労力を注ぎ込まなければならないわけです。
過去の学びや情報が邪魔をしている場合
それでは、具体的にどのような場合に、学びや情報・アドバイスが邪魔をしてしまうのか、少し考えてみましょう。
①今のあなたには適切なアドバイスでない場合
今は、Youtube等を筆頭に、沢山のテニスに関する情報・上達に関する情報があります。もちろんコーチや先生からアドバイスを受ける方もいるでしょう。しかし、気をつけなければいけないのは、そのアドバイスや情報が、今のあなたにとっては、最も適切でない場合があります。
例えば、ある程度基礎ができている人に対して、よりレベルアップするためのアドバイスと、まだあまり基礎ができていない人に対して、基礎をきちんと固めるためのアドバイスは異なります。その時その時で適切なアドバイスを受けることが大切ですが、探し得た情報が自分にとって適切なものかどうかを判断することは難しく、誤った情報に一所懸命取り組んでも、かえってそれが上達の邪魔をしてしまうものになる可能性もあります。
②過去の時点では正しかったけれど、今は忘れたほうが良い場合
スポーツを上達していく過程では、初心者から始め、少しずつできるようになっていく過程で、たくさんのことを学んでいきます。その過程で、たとえば最初ボールがバットやラケットにまったく当たらなかったときには、バットやラケットの長さの感覚とボールとの距離感を掴むように、バットやラケットを意識して操ってボールに当てるようなことが必要かもしれません。
しかし、上達してその距離感を自然に体得してしまうと、逆にバットやラケットを操る感覚が邪魔をしてしまい、体と道具との一体感のようなものが作りづらくなってしまいます。そのようなときには、道具を操作して当てにいく取り組み方をリセットして、新たに組み立て直す必要があります。(詳細は、成長の秘訣はここに!アンラーンで新たな境地へで解説で解説)
③学びの邪魔をする過去の常識や抽象的な注意点
スポーツ界には長い間正しいとされてきた常識が存在します。たとえば、かつては筋力トレーニングがパフォーマンス向上のために最も重要視されていました。しかし、近年では、動きの質が重要であると認識されつつあります。つまり、「力を強くする」ことが一番だと信じ込んでいた時代から、「どう動くか」が非常に重要だとされてきています。
このように、過去の知識はが今のコーチングやトレーニングを邪魔することもあります。特に、古い常識に縛られてしまうと、新しいアプローチや革新的なトレーニング方法を受け入れられなくなります。
また、それぞれの競技で、よく言われるアドバイスというものがあると思います。例えば、「足を動かす」「ボールを見る」等、それぞれの競技でよく聞かれるものがあるでしょう。
しかし、こういった誰にでも当てはまり、そしてできたかそうでないかが明確でなく、具体性のないアドバイスというのは、注意が必要です。ある程度どのような課題にたいしても、これが原因であると考えることが出来ますし、アドバイスが実践できているかが不明確なので、どれだけやってもまだこの課題が原因だと考えることができ、終わりがないからです。
自分で考え、検証する
そのようなときに正しく判断するための第一歩は、まず今の自分の課題が何なのか考え、理解することにあります。何かしらうまくいっていない結果があると思うのですが、その原因はあなたの体が、打ち方が生み出しています。
だとしたら、それの何が原因なのか、考えてみましょう。
例えば、「安定しない」「ボールが飛ばない」といううまくいかない理由として、自分では「打点」が原因であったとしましょう。
しかし、動画等で色々な情報を探していると、安定しない、ボールが飛ばない、への対策として、色々な視点からのコツが提供されています。
まずは、きちんと自分が「原因」と思っている「打点」についてのものかどうか、確認しましょう。つい色々と目移りしますが、きちんと自分で考えた原因から軸足を動かさないことが大切です。
そして、その探し得たコツやアドバイスを取り組む際に、
・コツやアドバイスを実践できているかどうかが確認し、
・そのアドバイスを実現していて、かつそれが結果にどのような変化が表れているか確認する
ことを取り組んでみましょう。
ですので、これを実践すると、以下のようなケースになってくると思います。
1.コツやアドバイスを実践できていない、または実践できているかわからない
2.コツやアドバイスを実践できているが、結果が変わらない
3.コツやアドバイスを実践できていて、結果が変わる
このときに1と2は、そのコツやアドバイスに取り組んでいてもあまり変化が見込めないと思います。
このようにして、自分で考え、確認しながら、取り組むようにしましょう。
まとめ
私たちが学ぶべき大切なことは、情報に振り回されるのではなく、自分自身の感覚を信じ、試行錯誤を繰り返すことです。スポーツ上達には、パフォーマンスに関する新しい視点や柔軟な考え方が求められます。そして、その中で自分にとっての「正しさ」を見つけ出すことが、アスリートとしての成長につながるでしょう。
参考文献