スポーツの世界では、選手が目標に向かって取り組む際に幾つもの課題が立ちはだかることが少なくありません。例えば、新人のバスケットボール選手が「プロ選手になる」という目標を持って訓練を重ねているとします。この選手は、シュート技術を向上させる必要がある一方で、体力や戦術理解、メンタル面での強化も求められます。
当初はゴールを目指して計画を立てて一つの課題に取り組んでいたとしてもスムーズに達成できないと他の課題に気を取られることは良く起きます。シュート練習をしていると、体力やスピードの不足を実感し、すぐに持久力を上げるためのトレーニングに着手したくなります。しかし、その結果、シュート練習や戦術理解に十分な時間をかけられずに、あれこれ手をつけるだけで、どの課題も中途半端なままになってしまうことがあります。
このような状況は、スポーツ選手に限らず、あらゆる目標を追求する人々に共通して見られる甘い罠です。多くの課題を抱えていると、どれか一つを集中して改善することが難しくなり、結果的に全ての課題が不十分なままに終わってしまうという悲劇が起こります。この現象を解決するために、「根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルール」に基づく「行動科学」の視点が非常に役立ちます。
行動科学の視点からの課題の解決方法
行動科学は、私たちの行動がどのように決定され、どのように習慣化されるかに焦点を当てています。この視点から見ると、目標を達成するためには、一度に一つの課題に集中することが推奨されます。具体的には、最初に最も影響の大きい課題(たとえばシュート技術)に焦点を当て、その課題に対する具体的な行動と具体的な目標を立てます。
大事なことに集中することの重要性
また、「大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」では、重要なタスクに集中することが成功への近道であると説かれています。この書籍では、琵琶湖に浮かぶ小さな島のように、中心にあたる重要な課題にフォーカスし、その周囲にある他のタスクを整理・軽視するアプローチが推奨されています。これは、特に多くの課題を抱える環境において非常に有用な戦略です。
このように、行動を小さく、分かりやすく、そして集中して取り組むことで、選手は成功体験を積みやすくなります。ですが、それだけではうまくいかないケースがあります。
それは、具体的な目標に取り組んでいたとしても、それがうまく改善できない時に諦めたり、他の課題が気になってしまったりするのです。
ダックワースの「やり抜く力」
ここで、アンジェラ・ダックワースの著作『GRIT』を紹介したいと思います。この著作では、粘り強く目標に取り組むことの重要性が強調されています。ダックワースは、成功するためには単なる才能や能力だけではなく、情熱と粘り強さが必要だと述べています。一つの課題を粘り強く続けていくことは、特に逆境や困難に直面した時に、その成長を促進する重要な要因です。
この概念は、スポーツ選手が長期的な目標に到達するためにも不可欠です。目の前の課題を克服することができない時、選手は気持ちが折れそうになりますが、そこで粘り強さを持って再挑戦することがしばしばパフォーマンスの差を生み出します。
※粘り強く取り組む時、着実に課題を改善するための方法については、スポーツ選手が目標達成するためのチャンキング法も参考にして下さい。
まとめ:集中と粘り強さの二重奏
このように、目標に取り組む際には、単に「たくさんの課題をこなす」ことではなく、「一つの課題に集中し、それを続けること」が成功につながる重要な要素であることが理解できます。そして粘り強く取り組むことで、逆境を乗り越えられる力も培われるのです。
スポーツ選手が成功を収めるためには、焦点を持ちながらも粘り強く努力し続ける姿勢が必要です。課題に立ち向かう際は、根気と行動計画が両輪となって、目標達成への道を開いていくでしょう。