
「良いコーチさえいれば伸びるのに」「指導者がいないから上達しない」——そんなふうに思うこと、ありますよね。たしかに環境やコーチは大切です。でも、本当に私たちを変える原動力は、コーチの言葉そのものではなく、**自分の中に生まれる“問い”**です。
「コーチが合わない」と感じるときこそ、問いを手がかりに、学びを自分の手に取り戻しましょう。
動きが変わるとは、“プログラムを書き換える”こと
「コーチが合わない」「コーチ 合わない」と感じるとき、単なる相性の問題だけでなく、教わった通りにやっているのに上達しないというケースがあります。
そこで、コーチからのアドバイスを少し分解して考えてみましょう。たとえば「もっと力を抜いて」と言われたとして、コーチが体で捉えている“力を抜く”と、あなたが感じている“力を抜く”は、必ずしも一致しません。つまり、言葉として受け取った意味と、自分の身体の中にある意味がズレることがあるのです。そのようなとき、言葉は伝わっても、その意味をあなたは受け取れていないことになります。
だからこそ必要なのは、相手の言葉の意図を考え、想像し、自分の体の感覚に落とし込むこと。いまの自分の動きと目指す動きの差を観察し、理解し、組み立て直すことです。
スポーツの動きは、脳と神経に蓄えられた「運動プログラム」の組み合わせで実行されています。上達は、新しい知識を聞いただけで起きるのではなく、自分の中のプログラムが書き換わってこそ現れます。
その変化を生むための第一歩は、自分のプログラムを理解すること。いまの状態を具体的に掴めてこそ、アドバイスが指す意味との違いに気づけます。違いが見えれば、言葉を自分の感覚に翻訳し、小さく試し、結果を確かめながらプログラムを書き換えていけます。コーチの言葉はその材料であり、自分で意味づけして身体に実装するところに上達のカギがあります。
成長の出発点は「問い」
そのように考えると、まず考えたいのは、自分のプログラムを理解することにあると考えられます。そしてそこでカギになるのが問いの力です。
- いまのやり方は、なぜうまくいっていないのか?
- どこがズレているのか?
- どう直せば良さそうか?
- いまの自分の状態は具体的にどうなっているか?
こうした問いを立てることにより、今の自分の状態を観察し、理解することができます。その土台がある時、他人の言葉を受け身で飲み込むのではなく、その意味を理解し、そして自分のためのものとして受け止めることができるのです。
事例:素直な選手に起きた変化
ある選手は、コーチの指示にとても素直でした。しかし、練習の意図を自分の試合にどう結びつけるかを考える時間が足りず、成果が試合に出にくい状態が続いていました。
そこで、その選手は練習前後に短い問いを持つようにしました。
「この練習は自分のどの場面で効く?」「このアドバイスを試すとボールはどう変わる?」
問いを添えて練習すると、試合で使える技術として定着しはじめ、結果も着実に向上。練習が“意味のある時間”へと変わっていきました。
「観察 → 分析 → 仮説 → 実践 → 検証」を回す
上達のサイクルはシンプルです。
- 観察:自分の動き・感覚・結果を具体的に見る
- 分析:ズレや原因を言葉にする
- 仮説:「こうすれば良くなるかも」を決める
- 実践:小さく試す(反復よりも“検証しやすさ”重視)
- 検証:結果を比べ、次の仮説に活かす
この循環のスタートが問いです。だから「コーチが合わない」と感じるときほど、まずはこのサイクルを自分で回せているかどうか、振り返ってみてください。
まとめ:学びは自分に取り戻せる
成長は、誰かに言われたから始まるのではなく、自分が「なぜ?」と問うときに始まります。その助言は自分にとって何を意味するか。いまの体のどこに関係するか。自分の課題にどう応用するか。問いがあるほど、学習は“自分のもの”になります。だから、たとえ「コーチ 合わない」状況でも、問いを持つ力があれば前に進めます。コーチがいるときはその価値を最大化し、いないときでも自分で回せる。——それが、ブレない成長の土台です。