
「頑張ってるのに、なかなか変わらない」「正しいフォームに直しているのに、成果につながらない」──そんなふうに、上達への取り組みに手応えを感じられず、焦ることはありませんか?
多くの選手が、上達のためにフォームを整えようとします。コーチに言われた通りに構えを修正したり、動画を見ながらスイングの形を真似したり。
でも、フォームを変えているのに、実戦になるとまた元の動きに戻ってしまう──そんな経験を繰り返していませんか?
それは、フォームという“見える形”を修正しても、“見えない前提”が変わっていなければ、動きそのものは変わらないからです。
フォームを変えても、動きが変わらない理由
私たちの動きは、無意識に持っている“前提”や“捉え方”によってつくられています。
たとえば──
- 「ボールを強く打つには、自分が強く力を加えなければならない」
- 「ラケットは自分の力で振ってコントロールするものだ」
こうした考えが根底にあると、力を抜こうとしても無意識に力が入り、フォームがぎこちなくなります。
いくら外側の形を整えても、「どういう意図で」「どんなイメージで」その動きをしているかが変わらなければ、深いレベルでの変化は起きません。
だからこそ、技術的な変化の前に必要なのが、“捉え方”を見直すことなのです。
「ラケットを操作する」という前提が、動きを止めていた
ある選手の例です。
その選手は、「自分の力でラケットを操作する」ことを前提にスイングをしていました。
ラケットヘッドを“自分で動かす”意識が強いために、スイングが不自然になり、手打ちになってしまっていました。
しかしあるとき、捉え方をふとしたひらめきがありました。──
「ラケットでボールを打つのだから、「自分がラケットを速く動かす」のではなく、ラケットが速く動くようにするために自分はどうサポートすればよいか、という捉え方が大事なのではないか?」
その問いに向き合い、彼の捉え方は少しずつ変化していきました。
すると、「自分の力で振る」から「ラケットの動きをいかに邪魔せずにサポートするか」へと意識が移り、身体の使い方が大きく変わったのです。
力感が抜け、ラケットがしなやかに加速するようになりました。結果として、同じフォームでもボールの伸びがまったく違うものになっていきました。
これは、単なる身体操作の問題ではありません。考え方の変化が、動きに直結した例なのです。
捉え方の違いが、判断や動作を左右する
たとえば、試合中に「ここで決めなければ」と思えば思うほど、選手は固くなり、視野が狭くなります。
一方で、「決まるかどうかはわからないけれど最善を尽くすだけ」と考えられれば、より的確な判断が可能になります。
また、「構えは止まって作るもの」という認識のままでは、動きながら対応する場面で出遅れやすくなります。
一方で、「構えは常に更新されるもの」という捉え方があれば、相手の動きに合わせて柔軟に対応できるようになります。
つまり、捉え方が変わると、選ぶプレーやその質、さらには判断のスピードまでもが変わっていくのです。
プログラムを変えれば、動きは変わる
「なぜ動きが変わらないのか?」──それは、以前の捉え方に基づく“プログラム”がまだ心身に残っているからです。
変化には、“新しいプログラム”への書き換えが必要です。
そのためには、以下のようなステップが有効です:
- 今の動きに影響している「考え方」や「前提」に気づく
- それに対して問いを立て、意識的に捉え方をずらしてみる
- その新しい捉え方に基づいて、小さな場面・動きで練習してみる
いきなり全体を変える必要はありません。スモールステップで、思考→動作の変化を少しずつ積み重ねていくことが、確かな成長につながります。
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まとめ:見えない“考え方”が、あなたの動きを作っている
技術やフォームは、捉え方の“結果”です。
思い通りに動けない、上達しないと感じるときは、単に練習不足や努力不足ではなく、自分の中にある“見えない前提”が影響していることがあります。
だからこそ──
「どう捉えているか?」を問い直すことが、変化の第一歩になる。
そんな視点を持ってみてください。
👉 次の記事では、「捉え方を変える問いの立て方」「無意識の前提に気づく方法」について具体例を紹介していきます。