
「やればできる」だけでは、なぜ成果が出ないのか?
「これだけ練習してるのに、全然うまくならない」
「毎日取り組んでるのに、成果が見えない」
そんなふうに感じたことはありませんか?
多くの選手が一度は直面するこの“停滞感”。実は、それが単なる「努力不足」や「才能の限界」ではないことがほとんどです。本当に成果を出したいなら、必要なのは“量”ではなく“取り組み方”なのです。
「やればできる」という思い込みが、成長を止めている
「やればできる」「継続は力なり」といった言葉がモチベーションになることはあります。けれども、これらの言葉には落とし穴があります。
どんなにがんばっても、うまくいかないことはある。
原因がどこにあるのかを見極めないまま“同じやり方”を続ける限り、それは“ただの反復”にすぎません。むしろ、できない動き・できない考え方を反復してしまっているかもしれないのです。
つまり、「やってるのにできない」という状態には、必ず“変えるべきポイント”があります。そのポイントが見つかっていないまま、練習だけが積み重なっているとしたら…それは努力が成果に変わらないのも無理はありません。
成果を出すには、「練習の組み立て方」が大事になる
同じように練習しているのに、なぜか成果が出る人と出ない人がいる。
その違いは、「どこをどう変えるか」を見極め、順序立てて取り組んでいるかどうかにあります。
これは単に「メニューを工夫する」といった表面的な話ではありません。
たとえば、ミスが出てしまうのを修正したい場合でも、どこに原因があるかによって、やるべきことはまったく違ってきます。
- ミスが出るときと出ないときで何が違うのか?
- ミスが出るときはなぜそうなっているのか?
- ミスが出る原因は、一つか?もしくは複数あるのか?
- ミスが出る原因のうち、どれが一番優先度が高いか?
こうした問いを立てながら、今の自分にとってどこから取り組むべきかを見極めることで、成果の出る練習に変わっていきます。
たとえば、スポーツにおける試合で起こるミスの原因として、
- 物事への取り組み方
- 身体の使い方などの技
- 相手や状況に応じて自分の技を発揮するための対応力である間合い
- 的確な状況判断を選択していく戦略・戦術
といったものが考えられます。どれか一つが原因ということもありますが、一つではなく、それぞれの原因がある場合もありますし、原因同士がつながっている場合もあります。
こうしたときに、どれが本当の原因か、どれから優先して取り組む必要があるかを観察し、見極めながら、練習に取り組まなければなりません。
見当外れの原因に、どれだけ一所懸命に取り組んでも、ミスはなくならないことになります。
「とにかくがんばれば結果が出る」と思っていると、気持ちだけが先走って空回りしてしまいます。
今の自分には何が足りないのか、何から取り組むべきか。
それを見つけることが、努力を結果につなげる第一歩になります。
「たくさん練習しているのに…」と感じたら、見直すべき3つの視点
一生懸命に練習しているのに成果が出ない。
そんなときは、やみくもに量を増やすのではなく、「どこをどう見直すか」に意識を向けてみましょう。
以下の3つの視点が、成長につながる練習へと切り替えるためのヒントになります。
① 目的とゴールの基準は明確か?
「できるようになる」と言っても、何を指しているのかが曖昧では、練習の方向性が定まりません。そのため、一つ一つの練習の目的と、そのゴールを明確にするようにしましょう。
たとえば、フォームを変えたいとしたら、どこをどう変えたいのか?どうなったらOKなのか、がはっきりと自分でわかるようにします。
この時にゴールが明確でないと、今の取り組みが正しい方向なのかがあいまいになってしまいます。たとえば「足を動かす」という目的を作ったとしても、どのくらいどのように足を動かしている状態がゴールなのかが、明確でないので、どれだけ意識をしても「まだ足りない」と考えることができてしまいます。
目指すゴールがはっきりすることで、「できているか」「できていないか」の基準が明確になってきます。
② 現状のつまずきは、どこにあるのか?
「なぜうまくいかないのか」を言語化・観察できていますか?
たとえば、ミスが出る時に、技の課題だと思って取り組んでいたけれども、実は間合いや判断に課題があることもあります。
現状の課題を分析する時に、何がその課題を生み出しているのかを観察しながら取り組みましょう。その時に、①で目的とゴールを明確にした練習に取り組みながら観察することで、正しい分析を行っていくことができます。
③ 小さな手応えを感じられるよう、分けて取り組めているか?
一度に全部をできるようにしようとせず、課題を小さく分けて取り組むことが大切です。
たとえば、新しい技を身に着けたり、今の技を修正したいなら、
- 手首や前腕の使い方だけに集中する段階
- 体全体と連動させる段階
- ごくごくシンプルに修正した動きを取り組める段階
- 少しずつ実践に近づける段階
というように、ステップを分けることで、「できた感覚」が積み重なり、自信と精度につながります。
次に進むべき練習が見えてこないときは、量を増やすのではなく、
まずはこの3つの視点から自分の取り組みを見直してみてください。
その中に、次の一歩のヒントが隠れているかもしれません。
具体的に動きをどう変えていくか、についてはこちらの記事を参考にしてください→動きは脳で育つ:神経系の変化が導く“上達の原理”
「変わらない」のではない。「変え方を間違えている」だけ
「これだけやってるのに変わらない」と感じるとき、それは「やってない」のではありません。
ただ、“変え方”がズレているのです。
努力は方向が合っていないと成果にならず、努力を続けるほどに疲弊し、自信を失ってしまいます。
だからこそ一度立ち止まって、練習の“構造”を見直してみてください。
“どこをどう変えるべきか”という視点こそが、成果を出すための鍵なのです。
最後に:努力を裏切らせないために
本当に努力を成果につなげたいなら、“がんばる”だけでは足りません。
- 今やっていることは、何を変えようとしているのか?
- それは、のどこに作用しているのか?
- その構造が安定した上で、次のステップに進んでいるか?
こうした問いを持ち、自分自身のプログラム設計者になること。
それが、あなたの努力を裏切らない唯一の方法です。