頑張っても結果が出ないとき、それは気持ちの問題?

「頑張ってるのに結果が出ない」
この言葉は、スポーツでも勉強でも仕事でも、多くの人が一度は口にしたことがあるでしょう。すると、返ってくる言葉は決まってこうです。

「もっと気持ちを入れろ」
「やる気が足りないんじゃないか」

確かに、気持ちややる気は行動を起こすためのエンジンです。しかし、結果が出ない原因をすべて「気持ちの問題」にしてしまうのは、とても危うい考え方です。それは、間違った方向に全力で走り続ける危険と、同時に自分を追い詰めてしまうリスクを含んでいます。

「気持ちの問題」にすり替える心理的なワナ

人は、原因が分からないとき、不安や無力感を減らすために分かりやすい理由を求めます。「気持ちが足りない」「メンタルが弱い」という説明は感情的には納得しやすく、他人にも説明しやすい便利な言葉です。

しかし、この発想には前提があります。
それは、「今の自分でも、がんばればできるはずだ」という思い込みです。
この前提があると、「気持ちさえ変えればできるようになる」と信じ込んでしまうのです。

でも現実には、結果を左右しているのは、もっと具体的で、もっと目に見えない部分にあることが多いのです。フォーム、動きの順序、タイミング、判断の仕方…。こうした要素が噛み合っていない限り、どれだけ気持ちを高めても成果はついてきません。


間違った努力の怖さ — ある選手のケース

あるテニス選手の話です。彼は大会での連敗に悩み、練習量を倍に増やしました。朝練も夜練も欠かさず、「これだけやってるんだから、必ず勝てるはずだ」と信じていました。

しかし数か月後、彼は肘を痛め、長期離脱を余儀なくされます。
復帰後も、技術的な課題はそのまま残っていました。

なぜなら、原因は「気持ち」ではなく、**「打点に入るまでの動きが遅れていること」**だったからです。
増やした練習は、その遅れた動きを何千回も繰り返す結果となり、フォームに力みと強引さを植え付けました。その負担が肘を壊し、怪我という最悪の形で現れたのです。

努力の量に注目し、フォーム改善という根本に目を向けなかった結果、間違った動きが強化されてしまった。
これが、間違った努力の怖さです。


努力は「方向性」が9割

努力という言葉には、量のニュアンスが強く含まれます。毎日長時間取り組むこと、繰り返し練習することが努力だと思われがちです。

しかし、本当に成果を出す努力とは、正しい方向に向けた努力です。方向性を間違えた努力は、どれだけ量を積んでも望む結果には届きません。むしろ、怪我や燃え尽き、モチベーションの低下を招くことすらあります。


努力の方向性を見極めるためのステップ

努力の方向性を変えるには、次のような視点が必要です。

  1. 原因を具体化する
     「うまくいかない」という抽象的な状態を、「打点に入るのが遅れている」「踏み込みの角度が安定していない」など、観察可能な言葉に置き換えます。
  2. 具体化したら行動する
     原因を特定できたら、それに直接作用する練習に取り組みます。
  3. 変化を確認する
     取り組みの結果、動きや感覚に変化が出ているかを観察します。
  4. 変化がなければ原因を再検討する
     変化が生まれない場合は、原因が違うのか、あるいは「原因の原因」が隠れているのかを探ります。

このプロセスを繰り返すことで、努力は「ただの量」ではなく「成果を生む方向」に沿って積み重なっていきます。


💡「原因と結果」についての考え方は、こちらの記事も参考にしてください:

→なぜ努力が報われないのか?──原因と結果をつなげて考える視点


「やる気」だけでは越えられない壁

もちろん、気持ちやモチベーションは努力の燃料として重要です。
しかし、燃料だけでは車は動きません。
エンジンやタイヤ、ハンドルといった具体的なパーツ──つまり技術や判断力──が機能していなければ、目的地にはたどり着けないのです。

逆に、技術的な課題を解消できれば、必要以上に気持ちを奮い立たせなくても成果は出始めます。
「気持ちの問題」にすり替えてしまう癖をやめ、具体的な改善点に目を向けること。
これが、努力を成果につなげる第一歩です。


💡 まとめ

間違った努力を積み重ねてしまうと、成果が出ないだけでなく、時には怪我や長期離脱につながってしまいます。原因を「気持ちの問題」にすり替えてしまうのは、「頑張ればできるはず」という感情的な納得感を得やすいからです。しかし、本当に必要なのは、具体的な動きや判断基準の改善です。フォームや動き方を観察・修正し、変化が生まれているかを検証しながら、努力の方向性を調整していくことが、成果への最短ルートとなります。

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