ミスを味方にするメンタル立て直しの方法

試合や練習でミスが続くと、「もうダメだ」と気持ちが切れてしまうことがあります。取り返そうと焦って空回りし、頭では冷静でいたいのに、気づけば感情が先走っている。そんなとき、焦りを抑えることができず、自分でもどうしたらいいかわからなくなるものです。

多くの人は、そうした状態を改善しようと、深呼吸をしてみる、ポジティブな言葉を自分にかけてみる、あるいはプレーに集中しようとする——といった方法に挑戦してきたはずです。それでもなお、ミスの後に気持ちが崩れ、焦りが止まらない。そんな経験がある方も多いでしょう。焦りを抑えるために努力してきた人も多いはずです。そこには、「ミスとは何か」「失敗とはどういうものか」という前提が関係しているかもしれません。

ミスとどう向き合うかがメンタル立て直しの鍵

私たちは、無意識のうちに「ミス=悪いこと」と思い込んでしまいがちです。もちろん、失敗したくない、成功させたいという思いは自然です。ですがその気持ちが強くなりすぎると、ミスを排除すべきものと捉え、過剰に反応してしまいます。焦りを抑えることができなくなるのは、その「ミス=悪」という前提が根深く働いているからです。

では、まったくミスをしないゲームをするとしたらどうでしょうか?それは果たして楽しいでしょうか。私たちは、うまくいくかわからないものに挑むからこそ、達成感を感じられるのです。ミスの可能性があるからこそ、成長や緊張感、学びが生まれます。つまり、ミスは避けるべき敵ではなく、上達への入り口であり、メンタル立て直しの出発点でもあるのです。

ミスとは“ズレ”の情報です。そこに気づくことで、自分の動きや判断の改善点を知ることができます。再現練習とは、この“ズレ”を見つけて修正し、もう一度やってみるプロセスです。ミスがあるからこそ、より正確な再現練習が可能になります。


「どこがズレていたかを“原因と結果”で整理する練習法については、こちらの記事も参考になります。原因の原因に迫る視点が、メンタル立て直しや焦りを抑える準備にもつながります。
👉️上達する人が実践する原因と結果の考え方


努力の前提を変える

とはいえ、頭ではわかっていても、ミスをしたときには感情が動いてしまう。なぜでしょうか。それは、ミスをした自分を責めてしまう心の習慣があるからです。「ミスをしてはいけない」「失敗は悪いことだ」という価値観のもとで育つと、ミスが自分の価値を下げるように感じてしまいます。そのため、失敗から立ち直るよりも、まず自分を守ろうとして焦ってしまうのです。

ミスを受け入れるということは、自分の弱さを見つめることでもあります。うまくいかなかった現実を直視するのは勇気が要りますが、それがメンタル立て直しの第一歩です。自分がどうしてミスをしたのかを冷静に観察できるようになると、焦りが減り、次の行動へ切り替える準備ができます。

ミスを想定する力がメンタル立て直しを支える

ミスを見つめる覚悟ができたとき、今の自分がどのくらいミスをする可能性があるのかを理解することができます。自分の状態や傾向を観察することで、「どの場面で焦りやすいのか」「どんなときに判断が乱れやすいのか」を知ることができます。これが、焦りを抑えるための第一歩であり、失敗から立ち直る力を育てる出発点です。

ミスを想定することで、起きたときに落ち着いて対応できるようになります。想定とは、失敗を予言することではなく、心の準備を整えることです。だからこそ、メンタル立て直しの基盤は“観察”にあります。


“自分の状態を観察する”という視点を深めたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。ミスや失敗をただ責めるのではなく、観察することで失敗から立ち直る力を安定させるヒントが得られます。
👉️ 観察からはじまる上達の循環


ミスをしても崩れない心と体の整え方

ここまでの準備ができたら、メンタル立て直しをより安定させるために、ミスをしても大きく崩れない仕組みをつくりましょう。崩れにくさとは、感情を押さえ込むことではなく、ミスが起きた瞬間にも自分を観察できる余裕があることです。その余裕があることで、焦りを抑え、次のプレーに向かう判断ができます。

たとえば、練習の中で次の3つを意識してみてください。

(1)どんなときにどんなミスが出やすいかを整理する。

(2)どんな工夫でミスを防げそうかを考えてみる。

(3)そもそもミスが起きにくい環境や考え方を準備する。

そして、ミスをしたときは、次の流れで対応してみましょう。

①受けとめる:まず「ミスは成長の途中にあるもの」と受け入れます。焦りを抑え、感情の波を小さくする意識を持ちましょう。

②確かめる:どこがズレたのかを具体的に見ます。自分を責めず、動作や判断を冷静に観察します。

③戻す:呼吸や動きを整えて次に進みます。小さな再現練習を入れると、感覚が戻りやすくなります。

この流れを練習の中で繰り返すことが、失敗から立ち直る力を高めます。つまり、立て直しは根性ではなく、観察と再現練習の技術です。焦りを抑えながら、少しずつ自分を整える習慣を積み重ねていくことで、メンタル立て直しが自然とできるようになります。


実際に“再現練習”や“ミスを想定した練習”を設計したい場合は、こちらの記事もおすすめです。意図的にミスを想定し、対応を準備しておくことで、焦りを抑える構造が整います。
👉️できないをできるに変える練習法


ミスを恐れず前に進むために

「ミスしない自分でなければダメだ」と思っていませんか?

私たちは、知らないうちに「失敗=悪いこと」「努力=ミスをなくすこと」と考えてしまいがちです。でも、ミスや失敗は自分の成長を教えてくれる大切なサインです。ミスを通して、自分がどんなときに焦りやすいのか、どんな状況で判断を誤りやすいのかを知ることができます。

焦りを抑えることや、メンタル立て直しの力を育てることは、ミスを恐れずに受けとめ、再現練習を通して修正していく積み重ねの中で身についていきます。だからこそ、ミスを排除しようとするのではなく、ミスと向き合う準備をしておくことが大切です。

ミスや焦りが生まれたときこそ、こんな問いを立ててみてください。

「今の自分に何が起きていて、どう扱えばいいだろう?」

その問いに向き合い続けることが、焦りを抑え、失敗から立ち直る力を強くしていきます。


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