
練習を続けようと思っても、気づけば途中で怠けてしまう。それは意志が弱いからでも、やる気が足りないからでもありません。
脳は「不確実なこと」や「成果の見えにくいこと」にストレスを感じるようにできています。だからこそ、続かないときこそ本気度が試されている瞬間であり、その壁をどう扱うかが、上達を左右します。
本記事では、継続するための方法を科学的視点から整理し、モチベーションに頼らずに練習を続ける仕組みと、心の整え方を紹介します。
継続できないとき、脳の中では何が起きているのか
しかし、これは新しいことを始めたり、うまくいかない期間が続いたりするときの脳が負荷を避けようとする自然な反応であり、「これを続けるとストレスが大きい」と判断して、一時的にブレーキをかけているものかもしれません。
たとえば、練習中のテーマに集中できずに気が散ってしまったり、友達と話し込んでしまったり、といったかたちで、脳は疲れを感じたときに注意をそらし、エネルギーを守ろうとしています。
よくあるパターンとして、次のようなものがあります:
- 練習でミスが続くと「今日はダメだ」と感じて集中が切れる
- 成果が見えないと「意味がないのでは」「他のことに取り組んだほうがいいのでは」と感じてやめたくなる
- 他の人と比べて落ち込む
- SNSや動画を見て気分転換のつもりが、戻る気力がなくなる
まずは、なかなか続けられないとき、集中力が持たないときに、どのようなことが起きているのかを理解してみましょう。
練習がうまくいかない原因を“気持ち”で片付けず、動きや考え方の構造から見直す方法については、こちらの記事も参考にしてください。
👉️努力が報われないのはなぜ? やる気が出ない時に見直す“上達の構造”
モチベーションを維持するために大切な“気づき”
このように、続かないことを嘆くのではなく、「なぜ続かないのか」を観察することが出発点です。
多くの人は、継続できない自分に対して「根性がない」「集中力が足りない」「自分はダメだ」といった評価をしたり、とにかく次への行動を取ろうとしてしまいます。しかし、そのように評価をすることで、気持ちは一時的に引き締まるように見えても、実際には「自分」に対して「できていない」というラベルをつけることで、行動へのハードルが上がります。また、「自分」を振り返ることなく行動をしようとしても、継続ができていないことの根本原因と向き合っていないので、同じような事を繰り返してしまうことになりかねません。
だからこそ、まずは自分に対する評価や焦った行動に取り掛かるのではなく、“観察”から始めてみましょう。
観察とは、評価でも反省でもなく、“起きていることをそのまま見る”ことです。
- 続けられないパターンはどのようなものか
- どんな感情や出来事の後に避けがちか
- 逆に取りかかりやすい状況や環境はあるのか?
こうした観察を行うことで、「自分の継続を阻む条件」が少しずつ見えてきます。
自分を客観的に見ることで、練習の質を高める“観察”の方法を掘り下げています。
👉️観察で努力と結果が変わる。観察からはじまる上達の循環
続ける習慣が、試合で実力を発揮する土台になる
誰しも、試合中は緊張したり不安になったり、ということが起きるでしょう。「試合」という特別な状況だからそのようになってしまう、と考えるかもしれませんが、もう少し深く試合中を思い返していただくと、心の中にさまざまな声ーー「もうダメかも」「落ち着け」「まだいける」「どうしてうまくいかないんだ」─そうした声が出ていることに気づくと思います。
そういう点では、例えば一度決めたことを怠けるとき「今日は気分が乗らない」といった言い訳をしたり、怠けた自分に対して「他の人はできているのに」といったかたちで、心の声が出ています。
このような心の声、そして自分を観察することは、普段の練習や継続をする場面だけでなく、試合中に起きている心の声や自分を観察することにもつながるものです。
そのように考えると、こうした継続がうまくできていないときこそ心を鍛えるチャンスであり、このようなときこそが自分をコントロールし、逆境から立ち上げる力を育てるのです。続かない理由に向き合えるかどうかが、その人の上達の深さを決めていきます。
継続を支える心の整え方 ─ できない日をどう扱うか
観察するときに大事なのは、“どんな姿勢で見るか”です。
多くの人は「失敗した」「できなかった」と感じた瞬間に、自分を責めたり、過剰に落ち込んだりします。
「自分には向いていない」「また同じことを繰り返している」と考えると、気づかないうちに行動の意欲が下がってしまいます。
観察とは、そうした評価をいったん脇に置いて、「今、自分の中で何が起きているのか?」を冷静に見つめることです。
たとえば、「今日は集中が続かない」「焦って体に力が入りすぎている」「考えすぎて動きがぎこちない」といったように、状態をそのまま認識することが観察の第一歩です。
例えば楽器のチューニングがずれているとしましょう。私たちはそれを「音が合っていない」と捉えますが、それは私達がそう捉えているだけであって、楽器はただ単にその音を鳴らしているだけで、それはただの「音」であり、合っているも合っていないもないはずです。
つまり、「失敗」や「できていないこと」があったとき、そういう自分をどのように見ているかは、「自分の捉え方」によって決められているのであって、その「捉え方」の枠をはずしてみると、そこには良いも悪いもない、ということに気付かされます。
だからこそ、そうしたできごとに対して、評価を加えずに、ただ観察をするように、“データ”として扱いましょう。
事実を観察する姿勢を持つことで、起きていることを正しく観察することができ、それが正しい手立てにつながっていきます。
このように、失敗や停滞を冷静に観察できる人ほど、自分の行動パターンを客観的に調整できるようになり、その積み重ねが、練習のモチベーションを支える力になります。
モチベーション維持に欠かせない“仕組み化”
観察で、正しく原因を見つめることができてきたら、それをもとに継続するための仕組みづくりを行いましょう。
継続できなかったり、モチベーションが維持できないときは、ついモチベーションや感情を頼りにしがちですが、むしろやる気や感情に左右されないように、仕組みにしていくことが、継続へとつながります。
仕組みを作るときは、最初から完璧を狙わず、ハードルを極限まで下げ、取り組む時間帯を決めて予定に組み込んでしまうことで、無理無く取り組むことができます。
cue–routine–reward サイクル(習慣化の基本構造)
- cue(きっかけ):練習する時間や合図を決める
- routine(行動):短くても実行できる内容にする(例:「5分だけ素振り」)
- reward(報酬):小さな満足を見える形で残す(例:チェック表や日記)
このサイクルを整えることで、練習は“感情に依存しない行動”に変わります。
小さな成功を積み重ね、継続と上達を安定させるステップ設計についてはこちらでも解説しています。
👉️「できない」を「できる」に変える練習法
まとめ
継続において大切なことは、
- 継続 練習方法 は、「意志」ではなく「観察」と「仕組み」でつくる。
- 続かない瞬間こそ、心を鍛え、成長のサイクルを回すチャンス。
もし取り組んでうまくいかなくても、それを「失敗」ではなく「データ」として活かすことで、次の一手を考えるきっかけになります。
行動が途切れても、分析して修正できればそれも前進です。継続とは、結果を出し続けることではなく、“立ち止まっても学び続けられること”。
焦らず、観察と仕組みを整えながら、自分のペースで進んでいきましょう。