テニスのダブルスは、シングルスとは異なり、二人で戦うので、個々の技術だけでなく、戦術やフォーメーションを考えることで、強い相手にも互角に戦うことができます。そこで今回は、ダブルスの戦術の組み立て方・考え方について考えていきましょう。
自分たちの優位な状況・相手の嫌がる状況を作ることを考える
ダブルスでポーチができるようになってくると、少しずつダブルスでも勝てるようになってくるので、相手のレベルも上がっていきます。
相手のレベルがあがってくると、簡単にポーチに出れなくなったり、ポーチをしただけでは決まらなくなっていきます。また、相手もポーチに出るようになってくるので、先手を取られる場面も出てくるでしょう。
そのようになってきた時、考えるべきことは、
・自分たちの優位な状況を作り、ポーチに出やすい状況を作るためにどうすればよいか
・相手の嫌がる状況を作り、相手に楽にプレーをさせないためにどうすればよいか
・自分たちが嫌な状況にならないようにするためにどうすればよいか
ということを考えていくことが大切になります。
この状況を作るために、どうしたらよいか、次のような流れで考えてみたいと思います。
1.自分たちのできるショット、打てるショットを整理する。
2.自分たちが望ましい組み立て(自分たちが優位になれる、または相手が嫌がる状況)を作るためのショットやアイディアを整理する。
3.望ましい組み立てから、その後、どのように展開するか想定する
4.自分たちが望ましくないパターンを整理し、そうならないようにするためのショットやアイディアを整理する。
5.望ましくないパターンを防ごうとした時に、そのあとの展開を考える。
6.パートナーと連携し、リスクを下げる。
1.自分たちのできることを検討する
まず最初に「相手が嫌がる可能性があること」で、かつ、「自分たちが打てるショットやできるショット」をすべてリストアップしてみましょう。
ここで、「相手が嫌がること」とは、
・オープンスペースに打たれる状況:相手がいない場所、空いている場所に打つことができれば、相手を動かし余裕をなくし、自分たちの優位が作れます。
・時間がない状況:時間がないと、考える時間が限られて、余裕がない状況になり、「とりあえず返す」という対応が予想でき、優位になります。
・選択肢が少ない状況:ショットを打つときには、たくさんの選択肢があるほど相手にとっては優位であり、それが限られると、こちらに優位となります。
・ミスをしやすい状況:テニスはネットが障害物ですので、ネットから遠い状況からショットを打つことや、ネットを越さなければならない状況はミスが生まれやすくなります。
例えば、一般的に深いボールで相手のバックハンドの高い打点で打たせる状況を作れたら、それは相手にとって速いボールや色々なコースに打ちにくいので、選択肢が少ない状況を作ることができると言えるでしょう。
そして、自分たちができるショットで、かつ、相手が嫌がらせることができるショットはないか、検討してみてください。たとえば、以下のようなショットをヒントに考えてみてください。もちろん、記載したショット以外にも何か思いつくものがあれば、書き出してみてください。
・サーブ
・リターン
・ロブ
・前衛の足元
・ドロップショット
・低いボール
・深いボール
・ゆっくりのボール
・速いボール
・ショートクロス
・ロブ
2.望ましい組み立てを整理する
自分たちが打てるショットで、かつ、相手が嫌がるようなショットが書き出せたら、それをさらに自分たちの望ましい組み立てに落とし込んでみましょう。
ここでのポイントは、そのショットで決まることは期待せず、相手を嫌がる状況にする、ことを目的にしましょう。
例えば、
・ストロークラリーから、中ロブをあげて、バックのハイボレーを打たせる
・深いボールで、相手のバックハンドストロークの高い打点で打たせる
・サービスをバックに入れる
といったかたちで、整理してみます。
3.望ましい組み立てからの展開を想定する
そのうえで、その状況からどういう返球がありそうか、その返球に対して自分たちはどういうことができるか、と考えてみましょう。この場合は、自分たちにとって最も望ましい返球と、自分たちにとって最も望ましくない返球の両方を想定し、その場合の自分たちのポジションとその後の対応を整理しておきましょう。
例えば、
・ストロークラリーから、中ロブをあげて、バックのハイボレーを打たせる
→望ましいケース:バックのハイボレーを下がりながら打つ姿勢で相手が対応し、下がりながら打つ様子が見えたら、ポジションを詰めて構え、ボールた浮いたら、それを前に詰めて相手の足元に打つ
→望ましくないケース:バックのハイボレーを相手があまり下がっていないときは、パートナーの足元やセンターに打たれることに備えて、詰めずにセンターをケアするために少しセンター寄りに構えてポジションを構える。
といったかたちで、想定パターンを考えてみましょう。
4.望ましくないパターンを整理する
望ましい組み立てを整理したら、今度は自分たちにとって望ましくない組み立て、自分たちにとって苦手なショットであったり、自分たちがよく陥りやすい、嫌な状況を書き出してみましょう。嫌な状況とは、先程も書き出したような「オープンスペースに打たれる状況」「時間がない状況」「選択肢が少ない状況」「ミスをしやすい状況」です。
最近の試合を振り返り、具体的なシーンを書き出してみてください。
例えば、
・ストローク力が高くないため、相手のストローク力が高いと、パートナーがポーチに出れず、徐々にラリーで追い込まれて、ミスをしたり、ボールが甘くなってポーチに出られてしまう
といったかたちで書き出してみてください。
望ましくない組み立てを書き出したたら、そのような組み立てに持ち込まれないようにするための方法を検討します。先程書き出したショットを確認しながら考えてみましょう。
例えば、先程の例でいくならば、ストロークのラリーになってしまう前に、そうならないようにするためのアイディアを出してみましょう。
ロブでストレートに抜くことはできないか、もっと早い段階でラリーをカットするような形でボレーができないか、嫌な状況にならないようにするための方法を考えてみます。
5.望ましくないパターンを防ごうとしたときに、そのあとの展開を想定する
望ましくないパターンを防ごうとしたときに、どのような展開が想定できるか、考えてみます。
この場合、うまく理想通りに運べたケースもあれば、そうはいかなかったケースもあるでしょう。
例えば、先程の例で行けば、ストロークのラリー展開を前衛がボレーでカットすることを考えたときに、どういうケースが想定できるでしょう。
一番望ましいのは、相手前衛の足元にコントロールできれば、その後のボールは浮いてくる可能性があるので、それに対応すればよいでしょう。
しかし、たとえば、ボレーでカットできたけれども、あまり詰めることができず、とりあえず相手後衛に返球するしかできないときはどうでしょうか。この場合、もしできるならば深くボレーをコントロールできれば、相手後衛の返球は甘くなる可能性があるので、さらにそれをボレーのチャンスをうかがうことはできそうです。
あるいは、相手がストレートを抜いてきたパターンもあるかもしれません。この場合は、ストレートでラリー戦になることは避けられなそうですが、この場合でも相手にとっては、「前衛が出てくるかもしれない」というプレッシャーを与えることができていますので、ただクロスラリーで押し込まれている状況よりかは良い方向になる可能性が高いでしょう。
また、一番リスクが高く、嫌なケースは、ボレーでカットしようとしたけれども、ストレートを抜かれることや厳しいクロスコートを打たれることだと思います。
ですが、事前にうまくいかなかったケースを想定できれば、それに対して準備を行うことで、リスクを低くすることができます。
この準備はパートナーとの連携し、良くコミュニケーションを取って対応を準備しましょう。
6.パートナーとの連携を行う
望ましいパターン、望ましくないパターン、そしてそこからの展開を想定したら、そこで想定されるリスクに対して、パートナーと連携して準備しましょう。
例えばパートナーと事前に話して、「●本目で必ず出る」「相手がバックを打つときは必ず出る」とポイント前に打ち合わせを行います。この打ち合わせを行うことで、思い切った動きができ、かつ、望ましくないパターンも想定できているので、前衛は厳しいクロスコートも取れるように思い切って動き、後衛はストレートを打たれた場合も素早く対応ができます。
二人の間でのルールを作り上げ、その後の展開を二人で共有しておくことで、パートナーの動きが事前にわかれば、二人で最も良い動きとポジションを作っていくことができます。
勇気を持って実践し、磨き上げる
いつもと違う組み立てを試すときは、うまくそれができないかもしれない、もしそれができたとしてもポイントに結びつかないかもしれない、という恐れが出ると思います。
ですが、相手のレベルが高くなり、自分たちの思い通りに試合を運べないということは、そのまま、今のままのパターンでプレーをしていても、優位に運べる状況が来るわけではありません。
そして、もちろん試合でいきなり実践してもなかなかできるものではないので、練習のうちからパートナーとよく話し、実践しながら、うまくいった場合、そうでない場合の対応を繰り返し練習し、自分たちのパターンを磨き上げていきましょう。
新しい施策をトライするときも、それによって生じるリスク、うまくいかない場合にどうなるか、を想定して、準備ができていれば、十分に二人で対処することができます。
まとめ
ダブルスにおいては、戦術の組み立てで戦い方の幅が大きく広がります。
自分たちにとって望ましいシチュエーションを作るためのアイディア、望ましくないシチュエーションにならないようにするためのアイディアを振り絞り、そこから想定される展開を想定し、そのための準備をパートナーとよく話しておきましょう。パートナーとよく準備をすることで、施策を試す時に失敗する可能性を低くすることができます。