成長や上達に必須の要素 アドバイスだけではうまくならない理由とは?

スポーツに取り組む方にとって、成長や上達の瞬間は、かけがえのない喜びだと思います。しかし、なかなか変化を感じない、成長を実感できない、できるようにならない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。なかには、コーチや先生、先輩のアドバイスを一所懸命聞き入れて取り組んでいる、という方もいるかもしれませんが、アドバイスや知識、助言はただ一所懸命に取り組んでもうまくなりません。

なにか課題をクリアしたい、目標を達成したいというときには、困難が伴います。そのようなときに、必要だと近年指摘されているのが、GRIT(やり抜く力)です。このGRITを手がかりに、スポーツの場において、困難な局面、なかなかクリアできない局面で、どのようなことが起きており、どうしたらよいのか、解説したいと思います。

GRIT(やり抜く力)

スポーツにおいて目標を達成しよう、上達をしよう、という多くの方は、熱心に練習に取り組んでいることと思います。
GRIT(やり抜く力)においても、練習の大切さは指摘されていますが、特にその練習で、どれだけ明確に目的と意図を持って取り組むかが大切であるとされています。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける アンジェラ・ダックワース (著), 神崎 朗子 (翻訳)

1.ある一点に的を絞って、ストレッチ目標(高めの目標)を設定する。
2.しっかりと集中して、努力を惜しまずに、ストレッチ目標の達成を目指す。
3.改善すべき点がわかったあとは、うまくできるまで何度でも繰り返し練習する。

このように、ただ熱心にたくさんの時間をかけて練習をするのではなく、どういう目的で、何をどのように改善するかを考え、自分自身の成長に真剣に取り組む、このような練習が大切であると指摘されています。

しかし、とはいっても、こうしたストレッチした目標に取り組む過程で挫折したり、うまくできるようにならず、諦めてしまうこともあるのではないでしょうか。
この難所で、どのくらい改善の精度とスピードを上げられるかが大切です。この精度の向上が、あなたの成長を決定づけます。
スポーツにおいて、今の自分の技術を変化させたり、成長するためには、粘り強く取り組むことが大切です。そう簡単にできることばかりではありません。

そこでさらに必要となってくるのが、「情熱」と「粘り強さ」であると、指摘されています。
では、スポーツにおいて、まさに今「これがなかなかできない」といった場面で、どのように粘り強く取り組むことが必要なのでしょうか。

ただ、「意識」をするだけではうまくならない理由

多くの方が、上達するために、コーチや先生・先輩に助言を仰いだり、または動画や書籍などで、様々な情報を集めて、それらを参考に意図的な練習をしようと取り組むことでしょう。
しかし、ここで重要なのは、アドバイスや知識をただ意識しながら取り組むだけでは、相当な時間がかかってしまう、ということです。

アドバイスや助言というのは、あくまで他者からの視点・アドバイス・言葉であって、それはまだ自分のものではありません。
自分の体は、まだ上達前の状態であり、その状態で動いています。そこに、アドバイスや新しいやり方を取り入れていくためには、そのアドバイスややり方を、自分の身体や感覚に置き換えたり、そこに当てはめる、というステップが必要になります。

たとえば、「振り抜く」ということを意識しながら取り組むとしましょう。「振り抜く」という言葉には表現されていますが、そこに込められているのは、今の自分の感覚とは異なる「振り抜く」という動きであり、新しい感覚であり、新しい体の動かし方のプログラムです。

しかし、自分で振る動作をしながら、ただ「振り抜く」と、意識して行ったとしても、自分の体は、まだ今の体の動かし方で行っており、「振り抜く」という言葉に自分が込めた意味合いも、今の自分の感覚としての「振り抜く」であって、新しい感覚での「振り抜く」とは異なってきます。
その自分の「振り抜く」でどんなに脳から司令を出そうとしても、体の動きはこれまでの動きが行われます。

自分にしか見つけられないコツを発見する

それでは、どうしたら、新しい感覚での「振り抜く」を体得できるのでしょうか。

そのためには、「振り抜く」という動きを、より具体的に、自分の身体においてどこをどう動かして振り抜くという動きを表していくのか、変化させる、というステップを踏む必要があるわけです。
これは人によっては、言葉で具体的にできるものもあるかもしれませんし、あるいはもう少し感覚的なものもあるかもしれません。
例えば、長嶋監督が松井選手にバッティングの指導をした際には、スイングの「音」の違いで指導をしていた、と言います。

いずれにしても、まだ自分のものではない感覚や動かし方を、自分の身体に落とし込み、自分の体の動きを変化させる、自分だけの個別具体的なものにしていく必要があるわけです。

そこには、アドバイスや助言をただ受け取るだけではなく、それを自分にどう適用するかという点です。考えながら練習しても、ただやみくもに行動するだけでは、効果は薄いのです。

野球でもテニスでもサッカーでも、どんなスポーツ競技でも上達するために、誰からも何からも学ばない、聞かない、という方は皆無でしょう。しかし、それらのアドバイスや情報は、あくまで他者のものであり、一方で自分の動きは完全に自分だけのものであり、他者からのアドバイスや助言をただ意識するだけでは変化は訪れません。自分自身の体を通して、体験を通じて、学んでいく必要があります。

成功か失敗かという基準を超えて

このように捉えていくと、上達や改善というステップは、「成功」「失敗」というよりかは、「探求」「発見」と捉えることもできます。

もしも、なかなか出来ないときに、「失敗」「できない」「うまくいかない」という見方で捉えると、そこには挫折・落胆があります。

しかし、あなたの体において、新しい感覚や動きを獲得することは、まだかつて誰もやったことがない未知の領域に挑む冒険なのです。
それは、まだ誰もやったことがないので、「できた」「できない」「うまくいった」「うまくいかない」「成功」「失敗」というものではありません。
こう捉えると、必ずしも結果が失敗したとしても、それを”失敗”と捉える必要はないのです。それは、次のステップにつながる貴重な学びの機会となります。
そして、もちろん「勝利」「結果」というものも大きな喜びですが、この冒険の過程で体得したこと、そしてその道程での体験自体が、あなたの大切な宝物になります。

ぜひ、あなただけが体験できる冒険を楽しみ、冒険の道のり自体を楽しめるかどうか、探求する喜びと共に歩んでみてください。

まとめ

成長に必要なのは、ただ受けたアドバイスや知識を鵜呑みにするのではなく、自分自身の体に落とし込んでいくプロセスが必要になります。アドバイスや助言はあくまで他者のものであって、まだ自分のものではありません。その体の動かし方や新しいやり方・感覚を自分ができるようになっていくということは、まだ自分以外誰もやったことがないことであって、そこには自分にしか見つけられない、誰も正解を知らない答えがあります。探求する喜びを感じながら、そのプロセスを楽しんでみてください。

参考文献
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける アンジェラ・ダックワース (著), 神崎 朗子 (翻訳)

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