スポーツに取り組む人ならば、誰しも自分の技術を向上させたくて、日々練習に励んでいることと思います。しかし、ただがむしゃらに練習を続けるだけでは、同じ失敗を繰り返したり、課題がなかなか改善しなかったり、目標までの道のりが長いものになってしまいます。
今回は、練習を振り返り、記録をつけることの大切さについてお話ししたいと思います。あなたの練習スタイルが変わり、より成果を上げるためのヒントが見つかるかもしれません。
なぜ練習を振り返るのか?
練習を振り返るという行為は、成長するために必要不可欠です。成長するためには、自分を振り返り、改善する点を発見し、取り組み、そして取り組みが正しいものであったか確認することが欠かせません。
ここで大事なのは、振り返りだけでなく、記録をつけることです。「自分は忘れないから大丈夫」と思った方もいるかもしれません。しかし、記録をつけることは、ただ忘れないようにするだけではない、様々な効果があります。
「世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス」には、各界のトップ選手のノートが紹介されています。
この書籍から、振り返りと記録をする際のポイントを学んでいきましょう。
反省・復習・予習と記憶の定着
練習ノートのポイントは、反省・復習・予習だ。練習試合をやって反省点が生まれたら、悪かったところをなぜそうなるのかを分析し復習する。それを確かめて、次の試合でまた試す。
記録をすることで、自然に振り返りをする姿勢が身についていきます。
その日の練習を反省し、改善すべき点が何かを考え、そして次の練習のときに何を試みるかを整理する習慣へとつながります。
また、振り返りをして、「明日はこれを試してみよう」と思っていたのに、次に日になると忘れて練習をしてしまうこともあると思います。このようにも指摘されています。
ただ考えて終わるより、書いたことが頭に残りやすいことです。早田さんのようにノートを書くのは就寝前が多いようです。人は、眠っている間に記憶が定着することが多くの研究で証明されています。
人は「忘れる生き物」であり、一般的に20分で約4割のことを、24時間後には7割以上のことを忘れる、と言われています。
忘れることは、決してやる気がないからでもなく、そのようなものであると考えて、対策を考えましょう。その対策こそが「記録すること」です。記録をして、頭に定着させることで、その振り返りを次の練習のときにしっかりと取り組むことができます。
問題を客観的に整理する
また、このようにも指摘されています。
ノートを書くと、自分が取り組んでいる問題なりを「外在化」できます。外在化とは〝問題や課題を、その当事者の感情や人格の外にいったん取り出して置く〟ことを指します。
このように感情や人格と切り離して考える習慣をつけると、行動も含めて自分を観察しコントロールしやすくなります。
この「外在化」は非常に強力な手法です。
スポーツに取り組む中で、課題がなかなか達成できないことや、試合中練習中の感情の動きは、時に選手の成長を邪魔します。練習中に感じたことや問題点や感情をノートに書き出すことで、客観的に、冷静に観察し、分析できるようになります。
試合中や練習中の自分を振り返っていると、自分が無意識に行動したり、感情が動いてしまう場面があると思います。無意識に動いてしまう時、自分でもなぜ自分がそのように行動してしまうのか、感じてしまうのか、問われてもわからないことが多いのではないでしょうか。
つまり、私達は、自分でも自分という存在を本当に理解しているわけではない、と言うことができます。
しかし、振り返り、記録をつけていくことで、そこには自分が表れていき、自分という存在を理解していくことができるのです。
思考の整理と記憶の定着
その他にもこのような利点が指摘されています。
つまり、書いているだけで、スキルアップのトレーニングになってしまう。やり続けるとスキルの組み立てが頭の中に構築されるので、試合本番のときにその都度適していると思われるショットをスッと考えつくことができる。そして、よくいわれる「ひらめき」につながるものです。
記録をすることが、記憶の定着につながり、緊迫した場面やとっさの場面でのアイディアや行動につながる、と指摘されています。また、それ以外にも、継続して記録をつけた、という経験が、自信につながり、試合の場面でも自信を持って行動できるようになることも指摘されています。
歯磨きをするように振り返りの時間を
さて、どのような形で振り返りと記録を行えばよいのでしょうか。やったほうが良いと思っても、つい忘れてしまうこともあると思います。
おすすめは、歯磨きを寝る前にするように、一日のいつするかを生活時間の中に組み込むことです。習慣にしていくことで、忘れずに行うことができるようになっていきます。
できれば、練習後に振り返りの時間を設けると良いでしょう。ただ記録するだけでなく、何がうまくいったのか、何が改善点なのかを整理し、さらに改善できることを考え、次の練習で意識すべき点を明確にするようにしましょう。
まとめ
練習を振り返り、記録をつけることは、スポーツで成長するために必要不可欠なプロセスです。自分が何を学び、どのように成長しているのかを理解することで、次のアクションを見つける手助けになります。日々の小さな努力を記録し、振り返ることで大きな成果を得ることができるのです。さあ、今日から「振り返りと記録」を行って、あなたの成長の旅を一層豊かにしていきましょう。
参考文献