スポーツにおいて新しい技術を習得することや競技力を向上させることは、選手にとって常に挑戦です。
特に、多くの選手が、難しい技術を習得しようとして壁にあたり、小さな挫折や諦めを積み重ねることで、自信を構築できずにいます。うまくできない時、新しい技術がわからない時にどうアプローチするかは重要なポイントです。「根性論や意志力に頼らない行動科学」が提唱する「チャンキング」の考え方を用いることで、複雑な目標を分解し、具体的なアクションプランを立てることが可能になります。この方法でより効果的に目標を達成するための具体例を考えてみましょう。
チャンキングの考え方
チャンキングとは、大きな情報やタスクを小さな部分に分解し、扱いやすくすることを指します。この手法は心理学に基づいており、情報処理の効率を上げることができます。スポーツにおいても、難しいスキルや目標を小さなステップに分解することで、集中力を高め、達成感を得ることができるのです。
さらに、「目標を分解する」ときには、一般的には「フォーム」「メンタル」といった形での分解をイメージするかもしれませんが、本当に動きを改善したり、技術力をあげるためには、そのチャンキングを徹底して小さいものに分解することがポイントになります。
例えば、上記の書籍で紹介されている自転車競技での事例では、「ハンドルバー部分の滑り止めにはグローブの使用を止めて液体チョークを使うようになっていた」といったように、どこまで細部にまで分解できるかが上達の鍵を握っている、といっても過言ではないかもしれません。
目標設定とベイビーステップ
ここでは、チャンキングの考え方を元に「試合でのフリースロー成功率を80%以上にするためにフォームを改善する」という目標を設定したとしましょう。
※筆者はバスケットボールの経験者ではありませんが、チャンキングの考え方で組み立ててみます。
具体例:バスケットボール選手のフリースロー改善プロセス
1. 大きな目標の設定:
– 「試合でのフリースロー成功率を80%以上にするためにフォームを改善する。
2. チャンキングによる分解:
フォームの動きを分解して考えてみましょう。
- 手のどこでボールを支えるか、といったボールの持ち方
- ボールを持った時の重心
- ボールをスローする動作を開始する時にどこから動き始めるか
- ボールをリリースに向けた膝や下半身の使い方
- ボールリリースに向けた肘・腕・手首の使い方
- ボールリリースに向けた下半身と上半身の連動やそのタイミング
- ボールが手から放れる時のタイミングと場所
といったかたちで分解できるかもしれません。
3. ベイビーステップの設定:
– 各要素に分解したら、改善点を整理したうえで、具体的なアクションステップに落とし込みましょう。目標をいつまでに達成したいのか、といった目安に対して、これらの要素をどのように取り組んでいくか、整理していきます。
4 そしてさらにチャンキング:
このようにチャンキングを行ったとしても、各要素においてうまくできない、わからない時が出てくるでしょう。たとえば、「ボールリリースする時に、手首の力を抜いて体の力をボールに伝えたいのにうまくできない」といった形です。
そのようなときには、さらにここでチャンキングを行います。
【チャンキング例】
- ボールを持たずに、リリースする動きを練習する
- リリース目標を短い距離に設定して練習する
- 正しい動きで少しずつ長い距離が飛ばせるように練習する
こういった形で、うまくできない時にはさらに要素を分解できないか、小さな、達成できそうな目標に分解できないか考えてみましょう。
まとめ
スポーツにおいて成果を上げるためには、根性論や意志力だけでなく、科学的なアプローチが重要です。チャンキングの考え方を用いて、目標を小さなステップに分解し、一つひとつ着実にクリアしていくことが、最終的な成功に繋がります。この具体的なプロセスを通じて、選手は自信を持って新たな挑戦に取り組むことができるようになるでしょう。成功は単なる結果ではなく、日々の積み重ねによって築かれるものです。