戦略戦術の失敗はここから始まる|「できる」の勘違い

ノートや頭の中で戦略を考えているときの自分を思い出してみてください。 「こう戦えたらいけそうだ」「こう組み立てて試合を運ぼう」──そんなかたちで戦い方を組み立ててはいませんでしょうか。

戦略や戦術について考えるとき、多くの人は「どう攻めるか」「どんな展開にするか」を考えます。ですが、その前に一度立ち止まって考えてみてほしいことがあります。

それは、戦略の前提になっている動きや技が、本当に試合で確実にできるものなのか、今の自分は、何ができていて、何ができていないのか、という点です。

この整理が曖昧なまま戦略を考えると、頭の中では成立しているのに、実際に試合で使うことができない技や動きをベースに組み立ててしまい、試合でできない戦略になってしまいます。本記事では、試合で「できる戦略」と「できない戦略」を分けている境界線がどこにあるのかを、技術力の見極めという視点から整理していきます。


「時々できる」は戦略に使えない

たとえば、練習中に「今のは良かった」「さっきはできていた」という感覚をもとに、その技を試合での戦略に使おうとした経験はないでしょうか。しかし試合になると、同じ場面で怖くなって選べなかったり、実際にやってみてもミスが続いたりする。

このようなとき、「本当はできるはず」「今日はたまたま調子が悪かっただけ」と考えがちです。たしかに、「調子の良い日」はできるかもしれませんが、試合の日に調子が良いかどうかはわからないので、試合で使うことができる戦略かどうか、という観点で見ると、“調子が良ければできる”は再現性の低い選択肢になります。

試合の場では様々な事が起こりますが、どのような事が起きても戦わなければなりません。戦略には、どのような条件でも「できる」技や動きであることが必要であり、そのように自分の技や動きを振り返って、

  • 緊張していてもできるか
  • 連続して成功するか
  • 相手や状況が変わってもできるか
  • 調子の良し悪しに関係なくできるか

という視点で見ても、「できる」と言えるものでなければ、試合での戦略の軸にすることはできません。逆に言えば、

  • 練習ではたまにうまくいく
  • 調子が良い日はできる
  • 相手や状況が限定されていればできる

といったような、時々できる技は、練習テーマとしては重要で、それらをできるようにしていくことは大切ですが、戦略に組み込めるレベルの「できる」かというと別の問題だということです。


今の自分を整理する

練習を通して、自分の技や動きを改善したり、精度を高めるために取り組む、こうした一つ一つの技や動きを高めていくことは大切ですが、同時に「何ができて、何ができないのか」「どういう条件ならできるのか」という視点でも考える必要があります。

戦略戦術を頭の中で組み立てるときに必要なのは理想の状態ではなく、**今の自分が実際に使える選択肢、つまり今の自分に「できること」が何なのかを把握がすることが必要ですが、ここで大切にしたいのが、「できる/できない」を白黒で分けず、使える・使えないの間にもグラデーションがある、と捉えることです。

たとえば、

  • 得点を取りにいく形では使えないが、つなぎとしてなら安定する
  • 精度は高くないけれど、使うことはできる

といった具合に、「どういう使い方なら成立するのか」を含めて「自分のできること」を整理していくことで、戦略の幅が生まれていきます。「本当に緊張した場面でもできるのか」と捉え始めると、できることが少なく見えてきてしまいますが、あまりに自分の技や動きに厳しくなってしまう必要もありません。「できない」と捉えた技や動きでも、精度や強さを変えたり、状況によって使うことができないか、それらを考えて組み合わせることで試合で使える戦略が組み立てられていきます。


成功の地図は、失敗も含めて考える

上達や試合での勝利を「地図」に例えると、多くの人は成功ルート、相手を倒す方法や良いプレーをする方法を描こうとします。ですが実際には、失敗するルートを避けれるようにすることも同じように大切です。

「自分のミスが出やすい場所」「この形になると選択肢がなくなる」─こうしたポイントを正しく理解し、失敗の地図として上達の地図に組み込むことで、自分が歩むべきルートが完成していきます。

「失敗に注目すると自信を失う」という考えもあるかもしれませんが、自分の失敗する場所やルートを把握せずに歩み、知らぬ間に窮地に陥るより、事前に失敗を理解し、それを避けるようにすることは、むしろ、自分が安全に通れるルートを明確にする作業です。戦略とは近道探しではなく、今の自分が確実に進める道を選ぶこと。そのために、成功と失敗の両方を一枚の地図として持つ必要があります。

そのように明らかにしていくと、「近道だけど、失敗しやすいルート」や「遠回りだけど確実にたどり着けるルート」が見えてきます。多くの人は、ここまでルートを明確に意識せずに「近道」に見えるルートを無意識のうちに選び、失敗しやすいルートにはまりがちです。しかし、自分の失敗の地図も明らかにすることで、「近道だけど、失敗しやすいルート」ではなく、「遠回りだけど確実にたどり着けるルート」を正しく選択していくことができます。

戦略とは、決して最短距離を選ぶことではありません。そこに潜むリスクをも理解したうえで、今の自分が通れるルートを使って、ゴールに近づくことです。そのためには、自分の失敗も含めて、一枚の地図として把握しておく必要があります。


まとめ|自分の地図で進むという選択

上手な人の戦略をそのまま自分が取り組もうとしても、技や動きの土台が異なるので、ただのコピペ練習となってしまい、試合で使える戦略にはなりません。上手な人や強い人の戦略を参考にすることはとても大切ですが、知識迷子にならずに、自分の地図の中に落とし込んでいくように考えてみましょう。

戦略戦術を考えるうえでは、「できるかどうか」を感覚や期待で判断するのではなく、今の自分の技や動きがどんな条件なら実際に使えるのかを整理することです。調子や相手に左右されずに使える技を戦略の軸に据えつつ、条件付きで使える技や動きは役割を限定して位置づける。この整理ができると、戦略は理想論ではなく、現実に選べる行動になります。

戦略戦術は、背伸びをするためのものではなく、今の自分の位置から前に進むための道具です。次の記事では、この「できる/できない」「どういう条件なら使えるか」という整理を、試合中の判断や選択のルールとどう結びつけるかを扱っていきます。

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