心の強さを築く方法:メンタルの弱さとは、闘わず、観察する

メンタルの弱さと戦っても、弱さは倒せない

スポーツ競技の世界では、身体や技術だけでなく、メンタルの強さが求められます。多くの選手がプレッシャーを感じ、自分のメンタルの弱さを改善したいと思うことでしょう。しかし、「メンタルを改善しよう」と思えば思うほど、逆にメンタルの弱さが目につき、もっと改善しなければと思ってしまいがちです。

例えば、試合で弱気になってしまう、安全な選択をし過ぎてしまう、としましょう。
頭の中では「もしかしたら入らないのでは?」や「もしこれをミスしてポイントを失ったらどうしよう」という考えが巡っているかと思います。
そのような時に、弱気にならないように、もっと強気に考えようと思って、「自分はできる」「入ると信じる」というようにトライすることがあるかもしれません。

しかし、そのように考えようとしても、本当にプレッシャーのかかった場面・緊張した場面で、信じ切ることができない、という体験がある方もいらっしゃると思います。

このように強気に考えたり、改善をしようと取り組む時に少し振り返ってみたいことは、
メンタルが弱い自分がいる、だから強くする、というように、メンタルが弱い自分がいることが前提となっていて、その土台の上に「メンタルが強い自分を築こう」としていると捉えることができます。
ということは、どんなに「メンタルが強い自分」を出そうとしても、「メンタルが弱い自分」の上に乗っているので、メンタルが弱い自分もきちんとセットでくっついてくる、ということが起きます。

では、どうしたら良いのか、もう少し深く考えてみたいと思います。

仏教からの教え

ここで、「心」について、2500年前から扱ってきている、仏教からヒントを得たいと思います。
僧侶の藤田一照さんが書かれた『現代「只管打坐」講義』では、釈尊が悟りを開いた際の教えについて説かれています。

煩悩を敵に回して攻撃して退治しようとするのでもなく、立ち止まって落ち着いて「煩悩とはいかなるものか」と煩悩そのものから辛抱強く学ぼうとした、ということだ。そこには煩悩に対する嫌悪ではなく敬意の念すらあったのではないだろうか?闘争あるいは逃走という解決法ではなく、煩悩に注意深く触れ、それを深く理解することによって乗り越える道を見出したのが釈尊であったのだ。

『現代「只管打坐」講義』

釈尊は、煩悩を敵に回して攻撃するのではなく、立ち止まり、冷静に「煩悩とは何か?」と観察しました。ここには、煩悩に対する嫌悪は感じることがありません。そして「闘争」や「逃走」ではなく、「観察」という姿勢が、釈尊を悟りへと導いたのだと考えられます。

自分の弱さをノートに書き出す

スポーツにおいても、心の中に湧き起こるプレッシャーや不安、焦り、恐れから目を逸らさず、戦わずに、よく観察してみることから始めてみましょう。例えば、ノートに書き出す、という方法も良いかもしれません。
もちろん理想は、試合中の緊迫した場面でも冷静に自分を観察できることがゴールですが、なかなかすぐにできるものではありません。

まずは、試合後等に自分の心を振り返り、心がどう動いていたかノートに書き出してみましょう。

最初は、まとまらないかもしれません。その場合は、とにかく思ったこと、頭に浮かんだことをどんどん書き出してみて良いと思います。
これは「ジャーナリング」という手法で、「書く瞑想」とも言われています。
プレッシャーや不安、自分の弱さや悩み、自分のどろどろした部分を全て書き出しましょう。泣き言、愚痴、文句でも構いません。すべてを外に出してみましょう。

あるいは、以下のような問いかけを自分にしてみても良いと思います。ましょう。
・どういう場面で、どういう相手の時に、どういう気持が起こりやすいのか?
・その気持が起きると、プレーがどう変わるのか?
・なぜその気持が起こるのか?何が怖いのか?
・練習中にその気持ちに近い状況が起きていることはないのか?
これに限らず、自分で問いを立てて、自分に問いかけてみてください。

この作業を通じて、あなたはあなたの心がどのような状態なのか、どのような性質があるのか、その性質はどういう時に表れやすいのか、理解していくことができます。
書き出すことで、感情を客観的に見る訓練を積むことができ、少しずつ、まさにその環状が起きているときでも、自分を客観視することができるようになっていきます。

まとめ

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。
敵をよく理解し、自分をよく理解すれば負けることは無い、という教えです。相手をよく理解することも大切ですが、まずは自分を理解することから始めましょう。
自分の感情や弱さを観察し、理解していったとき、自分の弱さを受け入れ、その弱さを力に変えることができるのです。

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