
「足が速い」「器用」「センス」では、本当の差は説明できない
サッカーで伸びる子の特徴と聞くと、思い浮かぶ言葉はだいたい決まっています。足が速い、ボールタッチが柔らかい、負けず嫌い、メンタルが強い、センスがある。試合を見に行ったときに目に飛び込んでくる、わかりやすい要素です。
たしかに、これらを持っている子は目立ちます。けれど、不思議なことに、小学校高学年や中学生になると、足の速さで前に出ていた子が止まり、ボールタッチが柔らかかった子が伸び悩む、ということがしばしば起きます。逆に、「あの子はそんなに目立たなかったのに、いつの間にか中心になっていた」という子がいます。
こうした伸びを、身体能力や性格で説明しようとすると、どうにも説明しきれません。しかも「才能」「センス」という言葉は、とても曖昧です。曖昧なだけでなく、「生まれつきのもの=変えられないもの」として、話をそこで止めてしまいます。何がその子を伸ばしているのか、という本当の原因に、まったく近づけないのです。
伸びる子は、「うまくいかない本当の原因」を自分で探している
長く現場で選手を見ていて感じるのは、伸びる子に共通しているのは、足の速さでも性格でもなく、「うまくいっていないことの、本当の原因を、自分で探せる」という一点です。
うまくいかない現象には、必ず原因があります。原因のない結果はありません。伸びる子は、ミスをしたとき、それを「運が悪かった」や「メンタルが弱いから」で終わらせず、「なぜ、こうなったんだろう」と、その手前をさかのぼって考えます。ボールを失った、その瞬間だけを見るのではなく、失う前にどこを見ていたか、どんな体の向きで受けたか、と原因の”種”へ時間を巻き戻していく。そして「たぶんこれが原因だ」と見立てを立て、次の練習で試して、本当にそうだったかを確かめる。
これは、センスやひらめきではありません。原因を探し、仮説を立て、試して確かめる——この地味なプロセスを、自分で回しているだけです。同じ1年をピッチで過ごしても、このプロセスがある子とない子とでは、積み上がる中身がまるで違ってきます。「賢い」「サッカーIQが高い」と呼ばれるのは、たいてい、この探すプロセスが身についた子のことなのです。
熟達研究で知られる心理学者アンダース・エリクソンも、抜きん出ていく人の差を決めているのは生まれつきの才能ではなく、「何がうまくいっていないのか、何を直すのか」がはっきりした取り組みを積めているかどうかだと指摘しています。
だから、才能ではなく「問い」が、その子を伸ばす
そう考えると、保護者の方にできることが、はっきりと見えてきます。動きを教え込むことでも、才能を嘆くことでもなく、「本当の原因を、自分で探す」きっかけを、日常の中に置いてあげることです。
試合や練習のあとに、「もっと頑張れ」と言う代わりに、「今日は、何を直そうとしていた?」「そのミス、何が原因だったと思う?」と、一つだけ聞いてみる。子どもがうまく答えられなくても構いません。大事なのは、その場で正解を教えてあげることではなく、答えを一緒に探そうとする時間そのものです。ここで、つい「いや、あれは○○が悪かったんだよ」と答え合わせをしたくなりますが、そこはこらえる。子どもが自分なりに原因を考えた、その経験のほうが、ずっと大きな芽になります。
見立てが外れていても、いいのです。原因だと思ったものを試してみて、変わらなければ、「じゃあ、別のところに原因があるのかもしれない」と、また探せばいい。この繰り返しの中で、子どもは「うまくいかないのは、才能がないからではなく、まだ原因が見つかっていないだけだ」と、少しずつ思えるようになっていきます。
我が子を見ていて不安になったとき、まず確かめたいのは、足の速さでも、性格でもなく、「今、何を直そうとしているのか」を本人が言葉にできるかどうか、その一点です。言葉にできなくても、構いません。これから少しずつ、一緒に探していけばよいだけです。
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参考
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