
メニューを「こなす」だけでは、自主練は積み上がらない
「サッカー 自主練 メニュー」と検索すると、たくさんのリストが出てきます。リフティング100回、壁当て、コーンドリブル、シュート練習。どれもまっとうな練習で、やっていけないわけではありません。
けれど、これらのメニューを順番にこなしているはずなのに、試合になるとあまり変わらない。そう感じている選手は、相当数います。なぜでしょうか。原因の一つは、練習が「メニューをこなすこと」そのものになってしまい、「今、何を変えようとしているのか」が決まっていないことです。
練習は、たくさんやったから上達するものではありません。どれだけ回数を重ねても、脳と体に変化をもたらす取り組みになっていなければ、いまのプログラム(動きや判断のパターン)は、同じまま強化されるだけです。リフティングを100回できるようになっても、試合でファーストタッチが落ち着くかは別の話ですし、コーンドリブルが速くなっても、相手を見ながらのドリブルにすぐは変わりません。コーンは動かないし、寄せてもこないからです。メニューだけがあって、「何を変えるか」が決まっていないと、量は積み上がっても、中身は同じ場所に留まる。試合で同じミスを繰り返すのは、たいていここに理由があります。
熟達研究で知られるアンダース・エリクソンも、ただの繰り返しと、技能を伸ばす練習を区別しました。後者には、「いま何を直そうとしているのか」が自分の中ではっきりしていることが要る、というのが彼の指摘です。
自主練は、「プログラムを書き換える」時間
では、どう設計すればよいのでしょうか。メニューを捨てる必要はありません。同じメニューを使いながら、「今週は、これを変える」という一点を、一つだけ持ち込むのです。
たとえばリフティング。「100回続ける」の代わりに、うまくいっていない原因を一つ見立ててみる。「試合でトラップが流れるのは、ボールの落ち際を最後まで見ていないからかもしれない」。そう思ったら、リフティングの30回を、「ボールが足に触れる直前まで見る」ことだけをテーマにやってみる。回数は気にしない。終わったら、「30回のうち、何回、最後まで見られたか」を確かめる。これだけで、リフティングは「足の感覚を上げる練習」から、「試合のファーストタッチにつながる、見る練習」に変わります。
同じ壁当てでも、「返ってくる前に、次のパスを出しやすい体の向きを作る」を一点に置けば、「受ける前の準備」の練習になります。大事なのは、メニューの種類ではなく、「今、どのプログラムを書き換えようとしているか」が一つ決まっていることです。意識のテーマを一つ持つだけで、同じメニューがまったく別の練習に変わります。
「こなす」で終わらせず、「達成する」まで
もう一つ、大切なことがあります。それは、「一度できた」で終わらせない、ということです。
練習で一度うまくいくと、「できるようになった」と感じます。けれど、意識すればできる段階と、試合の中で無意識に出せる段階は、別物です。脳の神経回路は、一度の成功では安定しません。繰り返し、少しずつ条件を上げながら定着させて、はじめて「試合で使える」ものになります。だから、「できた」はゴールではなく、スタートラインです。一つの「変える一点」を、1週間、1か月と同じテーマで続けて、頭と体に住みつくまで待つ。焦って次々にテーマを変えると、どれも定着しません。
保護者の方ができることは、ここでもさほど大きくありません。「リフティング何回できた?」と数字を聞く代わりに、「今週は、何を変えるって決めてるんだっけ?」と一つだけ聞いてみる。本人が答えられなければ、「じゃあ一つだけ、決めてみよう」と一緒に決める。これだけで、自主練の中身が静かに変わっていきます。
「自主練、何をすればいいか」と迷ったときに、まず立ち止まって考えたいのは、メニューの種類ではなく、「今、どのプログラムを書き換えようとしているのか」——その一点です。それが決まれば、リフティング1回でも、壁当て10球でも、上達につながる時間に変わります。
参考
ここまで読んで、「変える一点を決める、という考え方はわかったけれど、では今のうちの子にとって、最初に変えるべき一点は何なのか——そこがまだ霧の中だ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
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