サッカーの優位とは?数的優位・位置的優位・質的優位の作り方

「優位を作れ」では、何をすればいいかわからない

「優位を作れ」という言葉がうまく働かないのは、それが結果を指しているからだと思います。優位とは、相手に対して有利になっている「状態」のこと。けれど状態は、それ自体を直接つかみにいくことができません。「有利になれ」と言われても、何をすれば有利になるのかが示されていなければ、選手は動きようがないのです。

そこで、まずは、「有利」という一語をほどいて、どんな種類の有利があるのかを整理してみましょう。サッカーで言う優位は、大きく三つに整理できます。この三つが見分けられるようになると、「いま、どの優位なら取れそうか」という問いに変わり、ぼんやりした言葉が具体的になっていきます。

優位には三つある──数的・位置的・質的

一つ目は、数的優位。ある局面で、味方の数が相手を上回っている状態です。2対1、3対2のように、その場所だけを切り取れば味方が多い、という状況を指します。ピッチ全体では11対11でも、局地的には数のかたよりが生まれます。これは、ボールを運んで相手を引きつけたり、味方が走り込んだりすることによって生み出されます。

二つ目は、位置的優位。相手が嫌がる「場所」に立っている状態です。守備ラインとミッドフィールドのあいだ(ライン間)、相手最終ラインの背後、あるいは二人の相手の「どちらがつかまえるか」が曖昧になる責任の境目。こうした場所に味方が立つと、相手は捕まえに行くべきか留まるべきか迷い、その迷いがこちらの時間とスペースになります。位置的優位は、誰かが動いて場所を空け、別の誰かがそこを取る、という連動で生まれます。

三つ目は、質的優位。1対1のかみ合わせそのもので上回っている状態です。速さ、高さ、利き足、対面の得意・不得意。同じ1対1でも、こちらの土俵に持ち込めれば勝ちやすく、相手の土俵だと苦しい。質的優位は、その「勝ちやすいかみ合わせ」を見つけて、そこへボールと局面を運んでいくことで使えます。

三つに分けてみると、「優位を作れ」という一語が、「いまは数で上回れそうか」「相手の嫌がる場所に自分がいるか」「このマッチアップなら勝てそうか」という、観て確かめられる問いに変わります。

「わかる」と「できる」は違う──優位が成立する瞬間

一方で、「優位にしたらいいのはわかっているけれど、それができないから困っている」という方もいるでしょう。わかっているのになぜできないのか。一つよくある例で紐解いてみましょう。

優位を作れないチームでいちばん多いのは、「プレイヤーが引き出しているのに、空いた場所を誰も使わずに優位を作れない」場面です。優位は、引き出す人ひとりでは完成しません。引き出す人と、それによって空いた場所を使う人――この二人がそろって、はじめて成立します。そこで、もしチームが優位を作れていないと感じていたら、二つの視点から振り返ってみてください。

自分が引きつけたとき、味方は動いていたか。 自分がボールを運んで相手を引き出したその瞬間に、空いた場所に味方の誰かが入り、優位が作り出せていたでしょうか。もしも、自分の意図と違う結果になっていたとしたら、自分の意図は味方にどのように受け取られていたのでしょうか。

味方が引きつけているとき、自分は乗れたか。 一方で、味方が運んで相手を連れていったとき、自分がそれに気づき優位な状況を作り出せていたでしょうか。それとも、ボールばかり見ていて、味方の意図を理解できいなかったでしょうか。

このように、優位を作れる場面がなかったか、丁寧に振り返って、自分やチームメイトがどうその場面を捉えていたかを整理しましょう。そして、役割や意図が整理できたら、「この人が引き出したら、この人がこの空きに入る」と、役割を決め打ちにして、まずは読みも判断もいらない状態で、引き出し→優位を作る瞬間を、まず一度つくってみましょう。それができたら、少しずつ判断や難易度を上げ、つまずきがどこにあるかを確認しながら、練習の難易度を少しずつあげてチームとして習得していきましょう。

優位は、一気にではなく少しずつ作り続ける

ここまで、優位についてみてきましたが、こうして優位を作ろうとする時にやりがちなことが、「派手な一点突破や、一発で局面をひっくり返すプレー」です。こうしたプレーは、決まれば大きいですが、うまくいかなかったときのリスクも大きいものです。そして時折うまくいった時の記憶があると、「今度もうまくいくのでは」と期待して選択してしまうと、本当は注意しておくべきリスクを見過ごしてしまい、うまくいかなかった現実が訪れてしまいます。

一回のプレーで局面をひっくり返すような大きな優位は、それが実現すると強く印象に残るのでつい選択したくなりますが、そもそも、めったに作れないものです。大切なことは、小さく優位を作り続けることです。もしも今不利な状況だとしたら、少しでも対等な状況にまで持っていく、もしも今対等な状況ならば、少しでも優位な状況にする。数的優位・位置的優位・質的優位の観点で、少しずつでよいので優位に立てるようにしていきましょう。

最も注意したいのは、少し優位に立った状況です。こちらが少し優位に立っているということは、相手は不利な状況であり、これまで以上に相手は優位を作ろうとしたり、あるいは戦術を変えて臨もうと必死に向かってきます。一方で、こちらは少し優位に立つと、注意が散漫になり、それまではよく観察して気づいていた相手の動きを見過ごしやすくなるので、そうした変化に対応できず、せっかく築いた優位を相手に譲り渡してしまうことにつながります。ですので、少し優位に立ったときほど、さらにその優位にとどまろうとするのではなく、さらに優位を広げるように働きかけ続けましょう。その結果として、優位は手放されずに保つことができます。

早く点を取ろう、楽になろうという気持ちがあると、少しだけ優位でまだ主導権を握れていなかったりしっかりとしたチャンスが訪れていないのに勝負を賭けてしまい、せっかくの優位が手からこぼれ落ちてしまいます。焦る気持ちがあるのは当然ですが、冷静に考えてみると、優位を作り続けているあいだ、相手はずっと守りに追われ、こちらには次の選択肢が生まれ続けるので、チャンスは、一度の勝負で無理に作らなくても、自然と巡ってきます。少しのチャンスに賭けるのではなく、それを確実なチャンスとするように、小さく作り続けた優位を十分に大きくできたとき、前進や突破、シュートという結果に変わります。一発で決めにいくのではなく、小さく作り続けた末に、決まるべくして決まるものなのです。

孫子の『兵法』に、「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む」という一節があります。勝つ軍は、まず勝てる状況を整えてから戦いにいく、という意味です。優位を少しずつ作り続け、戦う前にもう優位ができている――そんな順番は、まさにこの考え方と重なります。さらに孫子は「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」とも言いました。一発の打開に頼らず、優位を積み上げて相手の動きようを奪っていく――その先にある理想の形を、二千年以上前の兵法書がすでに言い当てているように思います。

こうした優位を作るために、一手一手で「どのようにリスクとリターンで取りにいくか」という判断、つまり天秤のかけ方についての、「状況判断」については、こちらも参考にしてください。

まとめ──優位は、観て・狙って・少しずつ育てる

「優位を作れ」という言葉を正しく理解するために、数的・位置的・質的優位の三つに分けることで、優位を「観て確かめられるもの」にしてきました。そして優位は、味方との連動を通して、一気に大きく作ろうとするのではなく、小さく作って、少しずつ育てていくようにしましょう。

もしも、なかなか優位に結びつけられないときは、ほかのプレーと同じように、観る・読む・選択する、とプレーを分解してみましょう。いまどこに優位があるかを観て、自分が動いたら優位がどこへ移るかを読み、そのなかでどれを取りにいくかを選択する。これが回り始めると、優位は「偶然できるもの」から「狙って作り、移し替えていくもの」へと変わっていきます。

まずは一度の練習で、具体的に観る対象を一つに絞り、試合のあとに「それは観えたか」と振り返る。その積み重ねが、優位という曖昧な言葉を、自分のなかの確かな対象に変えていきます。一発で局面を変えようとしなくて、大丈夫です。小さな優位を作っては手放さず、少しずつ広げていく。その先に、チャンスは自然と増えていきます。


「優位を作れ」と言われても、どの優位を、どこから狙えばいいかは、一人ではなかなか見えにくいものです。

「じょうたつの学校」は、競技や年代を問わず、選手とその保護者の方に向けた個別のスポーツコーチングサービスです。試合や練習の場面をうかがいながら、まずはどの優位から観ていくかを一緒に決め、それが狙って作れるようになるまで伴走していきます。

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