
テニスを上達したい、という方にとって必要なのは、上達のためにどのような要素があるのかを理解したうえで一つ一つに取り組むこと、そして練習の取り組み方がポイントになってきます。それらを理解しているのといないのとでは、上達に大きな違いが出てきます。今回は、上達を加速させるための効果的な練習の取り組み方を解説します。
上達に必要な考え方
テニスを上達するために、例えばストロークやサービスといった具体的な悩みを持っていらっしゃる方もいると思いますし、試合でなかなか勝てない、なかなか上達しない、という方もいらっしゃると思います。
テニスを上達していくためには、一つ一つの技術や課題に対して取り組むことはもちろん大切ですが、課題に取り組むときに鍵になってくるのが、
「全体を理解して、一つ一つの改善点に取り組む」こと、「課題を改善していくための練習の取り組み方」がポイントになります。
テニスを上達していく過程は、宝探しと同じようなものです。宝探しをするためには、やみくもに歩いたりするのではなく、宝の地図を手に入れ、今自分がどこにいて、どの方向に向かうべきなのか、この先にどういうことが待ち受けているのか、そのために今はどういうことをしておくべきなのか、といったことが理解できているのといないのとでは、大きくその道程が異なってきます。
また、宝を見つけるためには、色々な敵や困難に打ち勝てるように、自分のレベルを上げていく必要があります。
ただ、そのレベルを的確にあげるためには、困難の性質や難易度、今の自分のレベルに合わせて自分を訓練し、レベルを上げていくことで上達していくことができます。
このようにして、「全体を理解して、一つ一つの改善点に取り組むこと」が、宝探しの地図を手に入れること、そして「一つ一つの課題を改善していくための練習の取り組み方」が、きちんと自分が上達して困難に対応できるようになっていくための考え方・取り組み方になります。
宝探しの旅に出る前に、まずはこれらを理解しておくことで、これからの旅路が大きく変わってきます。
「全体を理解して、一つ一つの改善点に取り組む」
それでは、まずテニスを上達していくためには、どのような要素があり、どのように組み合わさって上達していくのか、理解していきましょう。
そのために、上達に必要な要素を分解・整理してみたいと思います。テニスにおいて必要となる要素は4つに大きく分けることができます。
「打ち方・フォーム」と「フットワーク」
まず最初の2つが、「打ち方・フォーム」と「フットワーク」です。
テニスは、自分が打つ時と相手が打つ時で、ゲームを支配する権利が交互に入れ替わるゲームです。
相手が打つ順番では、相手は思い通りの展開にしようとしてボールをコントロールして、自分のいない場所へ打ってきます。
自分が打つ順番では、自分は自分の思う通りに展開しようとして、相手にいない場所へ打ちます。
このように考えると、「打ち方・フォーム」は、ゲームを自分の思うようにコントロールするためのもので、
「フットワーク」は、ゲームを相手に思うように支配させないためのもの、と言うことができます。
打ち方・フォームが良いもので、自分の思う通りの場所に思う通りのボールを打つことができれば、ゲームをコントロールしやすくなり、相手にコントロールされにくくなります。そして、「フットワーク」が良ければ、相手がコントロールしようとしている状況に対して対応できる幅が広がるので、相手にゲームをコントロールしにくくすることができます。
まずはこの2つの要素が、ゲームをコントロールするための土台となってきます。
「判断・選択」「メンタル・試合の流れ」
そしてあとの2つの要素が、「判断・選択と「メンタル・試合の流れ」です。
テニスは、相手から時間と場所を奪うスポーツであり、相手から時間と場所を奪われないようにするスポーツだと言うことができます。
相手に良い場所に打たれたり、自分が戻る前に打たれてしまえばポイントを失い、逆に相手のいない場所に打ったり、相手が戻る前に打てればポイントを取ることができます。
そうした戦い方をするために、自分は時間と場所を奪われないようにしながら、相手から時間と場所を奪うようにするための工夫が必要となります。
状況を理解し、自分のショットや動きを適切に判断しなければ、相手から時間と場所を奪われてしまいます。
また、試合では、練習にはない緊張感があり、また試合の流れも存在します。
おさえるべきポイントをおさえ、緊張感がある中でも自分の実力をきちんと発揮できるようなプレーができれば、持っている実力を試合で表現することができます。
上達の構造
4つの上達の要素である「打ち方・フォーム」「フットワーク」「判断・選択」「メンタル・試合の流れ」を紹介しました。
そして、これらの要素は、「打ち方・フォーム」「フットワーク」の土台に、「判断・選択」「メンタル・試合の流れ」が乗るように、実力が培われます。
例えばですが、どんなに判断力が優れていても、コートの真ん中にしか返せないショット技術しか持ち合わせていなかったら、その判断力を発揮することはできません。
また、様々なショットを打ち分けることができれば、それだけ選択肢も広がることになり、たくさんの判断・選択が可能になってきます。
ですので、「打ち方・フォーム」「フットワーク」という土台の大きさが大きければ大きいほど、その上に乗る「判断・選択」「メンタル・試合の流れ」も大きなものを乗せることができ、結果として大きな実力を発揮することができます。
そして、上達していく際に、お伝えしておきたいことは、これらの要素において大切なポイントをあらかじめ理解しておくことです。
というのも、上達を阻む壁になりやすいのが、あるところまで成長できるようになってきた過程で身につけた身体のクセや考え方が、その先の成長を邪魔する要因になる可能性があることです。
たとえば、最初はなかなかラケットにボールが当たらないときに、一所懸命練習をする過程で身につけた、ラケットにボールが当たる距離のとり方やラケットの扱い方が、将来的にさらに良いボールを打とうとした時に、それが邪魔をして、克服するのに時間がかかってしまうことがあります。
アドバイスや情報が上達を邪魔する危険性
しかし、あらかじめそれぞれの要素で必要となるポイントをおさえておくことで、着実に上達していけるように取り組むことができます。
以下に、各要素についての解説を記載しますので、よければ御覧ください。
打ち方・フォーム
きれいなフォームで打つための意識の仕方とは?
安定したストロークを手に入れる:必要な要素とは?
サーブのプロネーションのコツ
サーブのコンチネンタルグリップは握り方だけでなく●●が大事
打ち方やフォームがなかなか改善しないときの取り組み方
動き方やボールとの距離の取り方
テニス上達のカギ:打点の距離とタイミングを克服する方法
テニスの打点を安定させる方法
フットワークの決め手となるスプリットステップのポイント
試合で勝つためのストローク安定感向上の鍵とは?
トスを極める!サービスの精度を高めるステップ
ショットの判断や選択
テニスシングルス攻略法:組み立ての真髄を探る
ダブルスの勝利を引き寄せ、フォーメーションを磨き上げる方法
メンタルや試合の流れ
心の強さを築く方法:メンタルの弱さとは、闘わず、観察する
スポーツにおける「不安」「メンタル」を考える
競った場面でポイントを取る方法
メンタルが変わらない理由と、メンタル強化の秘訣
一つ一つの課題を改善していくための練習の取り組み方
そして、テニス上達において必要な要素とその構造が理解できたら、どのようにそれらを改善し、それぞれの要素を上達させていくか、を考えるための、練習メニューの作り方や取り組み方を理解しましょう。自分をレベルアップさせるための効果的な練習方法です。
練習は、ただ単に練習をしてもうまくなるわけではありません。意図を持ち、工夫をして取り組むことで、上達していくことができます。
逆に言うと、ただ一所懸命に練習をしても、「満足感」だけが満たされて、あまり上達していない、ということにもなりかねないのです。それを避けるために、いくつかの考え方を紹介したいと思います。
課題と改善点を明確にすること
まず1つ目が、練習に取り組むときに、何が課題でそれをどう改善したいのかを明確にすることです。当たり前のことですが、練習は、「できないことをできるようにする」ためのものであり、自分が何をできるようにしたいのか、何ができていないのかを明確にすることが大事です。そして、課題を明確にしてたくさん練習をしても上達はしません。運動というのは、自分の体の中にある身体を動かすプログラムを動かしていくということでもあります。ミスをしたり、うまく行かない場合は、そういうプログラムが身体の中に組み込まれているので、このプログラムをミスが出ないようなプログラムに練習を通して修正をしていくことが大事です。
課題を克服するために、どのように改善に取り組むのか、を明確にしてみましょう。何かを改善しようと取り組み、結果として課題が変わっているかどうか、確認しながら取り組むようにしましょう。
原因は一つではない
上達には、様々な要素が絡み合っているため、課題の原因は、一つではないかもしれませんし、原因の、さらに原因があるかもしれません。
そのために、改善点に取り組んできちんと課題に変化が出ているかどうかを確認しながら取り組み、もしも変化が出ていなかったら、他の原因が考えられないか、または原因のさらに原因がないかどうか、を考えてみましょう。
また、もう一つの大事なポイントは、もしも課題A←原因B←原因C、と考えて、原因Cに取り組んだとしても、すぐに課題Aが改善するとは限らない、ということです。原因Cに取り組むときは、原因Bに変化が出ているかどうかの確認にとどめ、すぐに課題Aという結果を求めないようにしましょう。
課題Aには、他の原因Dという要素もあるかもしれません。その場合、原因Cに取り組んでいてもすぐに課題Aが克服されなくても問題はないのですが、すぐに課題Aが改善されると期待してしまうと、原因を見誤ったり、あるいは中途半端な改善でとどまってしまうことになり、結局は遠回りになってしまいます。
メニューの工夫をすること
練習に取り組むときは、今取り組んでいる原因に集中して取り組めるようにすることが大事です。一つ一つのポイントをきちんと改善することが、結局は一番の近道です。やみくもに練習の負荷をあげたり、あるいは難易度をあげてしまうと、改善されていない運動プログラムが発動してしまい、プログラムの改善が意識されずに取り組むことになってしまいます。
きちんと原因が改善できるような、原因に取り組む意識がしやすい練習メニューにするように工夫をしてみましょう。
効率的な運動技術向上のためのアプローチ:できないことに挑むな!
可能性を引き出す「できない」を「できる」ようにするための練習法
成功をつかむための習慣–練習の振り返りと記録の重要性
まとめ
今回は、テニスを上達するための考え方・取り組み方を紹介しました。
上達に必要な要素を理解し、全体像を理解して歩むことで、効果的に上達していくことができます。
そして、一つ一つ今の課題に取り組むときには、練習の取り組み方を工夫して、きちんと原因が改善できるように取り組みましょう。