「もっとできたはず」が成長を止める——結果への執着を手放す技術


結果という「物語」に縛られる仕組み

試合の結果が出ると、私たちはその結果に対して一喜一憂します。この時、私たちは「結果」=「意味」であると考えがちですが、実はその結果をどう意味づけているかは、私達自身が決めている、という見方もできます。

たとえば、同じ雨でも、干ばつに苦しむ農家にとっては恵みであり、遠足を楽しみにしていた子どもにとっては悲しい出来事です。雨という事実は一つでも、受け取る人の立場や視点によって意味は正反対になる。試合の結果も同じです。「1対2で負けた」という事実は動かせません。でも、それを「相手より実力が足りなかった」というかたちで受け取るのか、「以前よりも良いプレーができるようになった」というかたちで受け取るのかによって、同じ結果でもその試合の意味は変わってきます。

サッカーのリーグ戦でのその1敗を、「負けた」という結果だけに目を向ければ、ただの失敗で終わります。しかし、試合中に見えるようになってきた相手のポジショニング、自分たちが試みた守備の工夫、後半に修正できた部分——そうした「プロセス」に目を向ければ、同じ試合がまったく違う価値を持ち始めます。

大谷翔平選手は、結果よりもプロセスに意識を向ける姿勢で知られています。日々の改善や自分なりの課題への向き合い方を重視するアプローチは、結果に一喜一憂するのではなく、自分の成長を軸に置く姿勢の一つの形と言えます。結果という「事実」は変えられなくても、それをどう受け取り、何を読み取るかは、いつでも自分で決められるのです。

「試し合い」として捉えるとき、見えるものが変わる

私達は、できることならば自分自身が「できている自分」であってほしいと思います。しかし、試合で自分が試され、「できていない自分」が明らかになると、その試合の結果を受け入れたくなくなり、「こんなはずではない」「もっとできるはずだ」と思ってしまいます。

試合という字は、「試し合う」と書きます。本来、試合とは「自分がどこまでできているのかを試す場」であり、何ができていて、何がまだできていないのか。それが明らかになる場所であるはずです。そのように捉えると、結果よりも内容に目が行き、「あの場面で自分は何を選択したのか」「どこまでは通用して、どこから崩れたのか」。そうした問いが自然に生まれ、成長につながる振り返りができるのです。

結果に心を奪われるのか、内容に目を向けられるのか。その分かれ道は、「試合をどう捉えているか」にかかっています。そしてその捉え方は、いつでも変えられるのです。

 

後悔を学びに変える振り返りの問いかけ

後悔にとらわれるのか、学びへと転換されるのかは、「どんな問いを自分に投げかけるか」によって決まります。

「なぜ負けたのか」という問いは、自分を責める方向に向かい、言い訳や「できなかった理由」を探すことに終始してしまうケースも生じます。そうではなく、「自分は何をどのように取り組んできたのか?」という問いに変えてみてください。目を向けるのは、試合の中の一瞬ではなく、そこに至るまでの日々の取り組みが試合の結果に結びついている、という視点で過去の取り組みを捉え、その取り組みがどうであったら結果が違っていたのだろうかと考えることです。

野球のピッチャーが失点した回を振り返るとき、「あのボールがコントロールできなかった」とだけ振り返るのではなく、「あの場面を想定して準備をしていなかったのはなぜか」という問いに向き合うことで、これからの練習の質に変化が生まれていきます。

試合でのパフォーマンスは、それまでの日々の準備によって少しずつできあがっていくものです。そのため、試合の日にいきなりパフォーマンスが上がったり、メンタルが安定したりすることはありません。もしもそのように感じていたとしても、その芽は必ずそれまでの日々に芽生えていたはずです。そのように考えると、試合の日にいきなり良いパフォーマンスをあげることは難しいという現実にもつながりますが、一方で、試合の日のパフォーマンスがそれまでの過程の中でどう形作られてきたかを明らかにすることができれば、これからどういう日々を送れば試合の日のパフォーマンスが変わっていくかを描くことができるのです。

試合の結果に執着することは、成長の足かせになります。しかし、結果を「そこに至るまでの取り組み」と照らし合わせたとき、後悔は「次の試合までに、これをやる」という決意に変わります。その積み重ねが、本当の意味での強さをつくり上げていくのです。振り返りの具体的な方法をもっと知りたい方は、観察で努力と結果が変わる。観察からはじまる上達の循環もあわせてご覧ください。


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